乳児、幼児の歯磨きについて、疑問や不安に思われている親御さんは非常に多いです。「どうせ生え変わるから」と乳歯のケアを軽視してしまう親御さんも一定数いますが、これは大きな誤解です。乳歯は単なる「仮の歯」ではなく、お子さんの健康や発育に深く関わる重要な役割を担っています。
🍽️ 食べる・噛む機能
食物を噛み砕き、消化を助ける。乳歯が虫歯で痛むと食欲低下にもつながります。
🗣️ 言語・発音の発達
歯が揃っていることで正確な発音が可能になります。歯の喪失は発音障害の原因になります。
🦷 永久歯の誘導
乳歯は永久歯が正しく生えるための「道しるべ」。早期に失うと歯並びが乱れます。
😊 心理・自己肯定感
歯の状態は笑顔と密接に関係します。虫歯が多いと自信や積極性にも影響します。
虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌)は生まれた赤ちゃんには存在せず、親や周囲の大人からうつります。スプーンや箸の共有、キスなどで感染するため、大人自身の口腔ケアも非常に重要です。乳歯の虫歯が進行すると、痛みや感染が永久歯の歯胚(歯になる芽)にまで影響し、永久歯がきちんと形成されない場合もあります。だからこそ、最初の歯が生えた瞬間から歯磨きを始めることが推奨されています。
1. 月齢・年齢別 歯磨きのステップ
お子さんの歯は段階的に生えてきます。それぞれの時期に合わせたケア方法を知っておきましょう。


歯が生える前(0〜5ヶ月)の口腔ケア
歯が生えていない時期でも、口の中を清潔に保つことが大切です。授乳やミルクの後は、湿らせたガーゼを人差し指に巻いて歯茎や頬の内側を優しく拭いてあげましょう。この時期のケアは、口を触られることへの慣れを作る意味でも非常に重要です。
最初の歯が生えたら(6ヶ月〜)
最初に生えてくるのは、下の前歯(下顎乳中切歯)が一般的です。この時期から歯ブラシを使ったケアを始めましょう。乳児用の小さなヘッドのシリコン製歯ブラシがおすすめです。この時期は「歯ブラシを口に入れること」に慣れさせることを最優先にしてください。
1歳〜3歳:仕上げ磨きのスタート
乳歯が増えてくるこの時期は、自分で歯ブラシを持って「磨いた気になる」だけでは不十分です。必ず親御さんによる仕上げ磨きを行いましょう。お子さんを膝に寝かせ、歯ブラシで丁寧に磨く「膝磨き」の姿勢がおすすめです。
3歳〜6歳:自分で磨く習慣づけ
お子さん自身が歯ブラシを持って磨くことが好きになるよう促しましょう。ただし、この年齢では手先の器用さが十分に発達していないため、必ず大人が仕上げ磨きをすることが不可欠です。小学校低学年(8〜9歳)頃まで仕上げ磨きを続けることが推奨されています。
2. 歯磨きの正しいやり方(仕上げ磨き)

仕上げ磨きの手順
①ポジションを整える:子どもを大人の膝の上に仰向けに寝かせます。頭を固定しやすく、口の中が見やすいのがポイントです。
②歯ブラシを正しく持つ:ペンを持つように軽く握り、力を入れすぎないようにします。グッと握るのはNG。
③磨く順番を決める:「右上の奥歯から → 前歯 → 左上の奥歯 → 下の歯」など、磨き忘れを防ぐルーティンを作りましょう。
④歯ブラシを小刻みに動かす:歯ブラシは1〜2mm程度の小さな幅で細かく振動させるように動かします。大きくゴシゴシこするのは歯
茎を傷つけます
⑤特に奥歯・歯の間を念入りに:虫歯になりやすい場所を意識して、奥歯の噛み合わせ面と歯と歯の間を丁寧に磨きましょう。
⑥仕上げにうがい:フッ素の効果を残すため、うがいは少量の水で1〜2回にとどめましょう。
磨き残しが多い場所
子どもの歯で特に虫歯になりやすく、磨き残しが多い部位があります。意識的にケアしましょう。

3. フッ素(フッ化物)の使い方
フッ素(フッ化物)は、歯のエナメル質を強化し、虫歯菌が出す酸への抵抗力を高める効果があります。日本小児歯科学会・日本歯科医学会でも、適切な濃度のフッ素歯磨き粉の使用が推奨されています。
① 歯質強化:エナメル質をフルオロアパタイトに変えて丈夫にする
② 再石灰化促進:酸で溶け始めた歯を修復する
③ 虫歯菌の抑制:虫歯菌の酸産生を抑える
年齢別フッ素濃度と使用量の目安
| 年齢 | フッ素濃度 | 使用量の目安 | うがいの方法 |
|---|---|---|---|
| 6ヶ月〜2歳未満 | 1,000ppm以下 | 米粒大(約0.1g) | うがいなし、拭き取り |
| 2歳〜5歳 | 1,000ppm以下 | グリンピース大(約0.5g) | 少量の水で1〜2回 |
| 6歳〜14歳 | 1,000〜1,500ppm | 1〜2cm程度 | 少量の水で1〜2回 |
フッ素の効果を口の中に残すために、うがいは少量(10〜15mL程度)の水で1〜2回のブクブクうがいにとどめましょう。大量の水でゆすぐとフッ素が流れてしまいます。就寝前の歯磨き後にフッ素入り歯磨き粉を使うと特に効果的です。
フッ素塗布(歯科医院での処置)
歯科医院では、高濃度のフッ化物ワニスや泡状のフッ素を歯に塗布する処置(フッ素塗布)が受けられます。1歳半健診や3歳児健診などの定期健診と合わせて、3〜6ヶ月に一度受けることが推奨されています。ご自宅でのケアに加えて、歯科医院でのフッ素塗布を組み合わせることで、虫歯予防の効果が高まります。
4. 歯ブラシの選び方と交換時期
子ども用歯ブラシの選び方
🔵 ヘッドのサイズ
子どもの口に合った小さなヘッドを選びましょう。大きすぎると奥歯に届きにくくなります。
🌸 毛の硬さ
「やわらかめ」か「ふつう」を選びましょう。乳歯や子どもの歯茎はデリケートなので、やわらかめが安心です。
🤲 グリップ
仕上げ磨き用は大人が持ちやすいストレートなグリップ、子ども自身が使う用はやや太めの持ちやすいグリップのものを選びましょう。
🛡️ 安全設計
転倒時の喉突き防止ガードが付いたものを選ぶと安心です。乳幼児が自分で使う場合は特に重要です。
🔄 歯ブラシの交換サイン
歯ブラシの毛先が広がってきたら交換のサインです。使用頻度にもよりますが、目安は1ヶ月に1本の交換が推奨されています。また、風邪や口腔内の感染症にかかった後は、回復後すぐに新しい歯ブラシに替えましょう。
デンタルフロスの導入タイミング
歯と歯の間は歯ブラシだけではきれいにできません。乳歯が2〜3本隣接して生えてきたら、デンタルフロスの導入を考えましょう。子ども用のホルダー型(糸ようじのような形)が使いやすくおすすめです。特に乳臼歯(奥歯)が生えた後は、歯と歯の間の虫歯(隣接面う蝕)のリスクが高まるため、フロスを習慣にすることが大切です。
5. 歯磨きを嫌がるときの対処法
「歯磨きを嫌がって困っている」というご相談は、歯科医院でも非常によく聞かれます。無理に押さえつけて磨こうとすると、歯磨き嫌いが悪化してしまうこともあります。以下の工夫を試してみましょう。
- 歌や音楽を使う:歯磨き専用の歌を歌いながら磨くと、子どもが楽しみやすくなります。「磨いている間ずっと歌うよ」というルールにするのも効果的です。
- 好きなキャラクターの歯ブラシを選ばせる:子ども自身が歯ブラシを選ぶプロセスに参加することで、歯磨きへの興味が高まります。
- ごっこ遊びを取り入れる:「歯医者さんごっこ」「虫歯バイキンをやっつけよう!」など、物語を作って楽しいイベントにしましょう。
- 先に子どもに磨かせてから仕上げ磨きをする:子どもが「自分でやりたい!」という気持ちを尊重しつつ、最後に大人が仕上げ磨きをします。
- 褒めることを忘れない:磨けたら大げさなくらい褒めてあげましょう。「すごい!全部きれいになったね!」という声かけが、次への意欲につながります。
- ポジションや場所を変えてみる:いつもと違う場所(リビングのソファ、洗面台の前など)で磨くと気分が変わって嫌がらないことも。
工夫しても強く拒否する場合や、口を開けることすら難しい場合は、歯科医師・歯科衛生士に相談しましょう。歯磨き指導を行う専門家として、お子さんの性格や状況に合わせたアドバイスが受けられます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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