今回は「口腔カンジダ症」について説明していきます。
口腔カンジダ症は、口腔内にカンジダという真菌(主にCandida albicans)が異常に増殖することによって引き起こされる感染症です。以下に、口腔カンジダ症の主な特徴や症状、原因、治療法について詳しく説明します。
(主な特徴、症状)
❶白い斑点や膜
舌、頬の内側、口蓋、喉などに白い斑点や膜が形成されます。これらはカンジダ菌の増殖によるもので、簡単に剥がれることがありますが、剥がすと赤くなったり出血したりすることがあります。
❷口腔内の痛みや不快感
感染が進行すると、口腔内に痛みや不快感を感じることがあります。特に、食事や飲み物を摂る際に痛みを伴うことがあります。
❸乾燥感
口腔内が乾燥しやすくなることがあります。これは唾液の分泌が減少することによって引き起こされることが多いです。
❹味覚の変化
味覚が変わることがあり、特に甘味を感じにくくなることがあります。また、金属的な味を感じることもあります。
❺出血
白い斑点や膜を剥がすと、下にある赤い粘膜が露出し、出血することがあります。
❻口臭
口腔内の感染により、口臭が強くなることがあります。
❼喉の痛み
感染が喉に広がると、喉の痛みや違和感を感じることがあります。
これらの症状は、特に免疫力が低下している人や、抗生物質を使用している人、義歯を使用している人に見られやすいです。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
(原因)①免疫力の低下
HIV/AIDS、がん、糖尿病などの病気や、免疫抑制剤の使用により免疫系が弱まると、カンジダ菌が異常に増殖しやすくなります。
②抗生物質の使用
抗生物質は、細菌感染を治療するために使用されますが、同時に口腔内の正常な細菌叢も減少させることがあります。これにより、カンジダ菌が増殖しやすくなります。
③口腔内の乾燥(ドライマウス)
唾液の分泌が減少することで、口腔内が乾燥し、カンジダ菌が繁殖しやすくなります。ドライマウスは、特定の薬剤の副作用や、放射線治療、自己免疫疾患などによって引き起こされることがあります。
④義歯の使用
義歯を使用している場合、適切に清掃されていないと、義歯の表面にカンジダ菌が繁殖しやすくなります。また、義歯が合わない場合も、口腔内の刺激や傷を引き起こし、感染のリスクを高めます。
⑤栄養状態の不良
ビタミンやミネラルの不足、特にビタミンB群や鉄分の不足は、免疫力を低下させ、カンジダの増殖を助長することがあります。
⑥ホルモンの変化
妊娠や月経周期に伴うホルモンの変化も、カンジダの増殖に影響を与えることがあります。
⑦ストレス
精神的なストレスや身体的なストレスも免疫系に影響して、カンジダの増殖を助長することがあります。
(治療法)
⑴抗真菌薬の使用
口腔カンジダ症の治療には、抗真菌薬が最も一般的に使用されます。薬にはいくつかの種類がありますが、以下が代表的です。
・ナイスタチン(Nystatin)
口腔内で直接使用する液体やトローチ剤(舐める薬)として処方されます。カンジダ菌の細胞膜を破壊することで、感染を抑えます。
・フルコナゾール(Fluconazole)
経口薬として処方されることが多いです。カンジダの増殖を抑える効果があります。
・ミコナゾール(Miconazole)
口腔内に適用するジェルやトローチとして使用され、カンジダ菌を抑制します。
治療期間は通常1~2週間程度ですが、症状によっては長期間使用する場合もあります。
⑵ 生活習慣の改善
口腔カンジダ症の発症を予防または改善するためには、生活習慣の見直しが重要です。
・口腔内の清潔を保つ
定期的な歯磨きと、舌や歯茎の清掃を行いましょう。
入れ歯を使っている場合は、毎晩洗浄し、清潔に保つことが重要です。
・糖分の摂取を控える
カンジダ菌は糖分をエネルギー源として利用します。過剰な糖分摂取を避けることが予防につながります。
・免疫力を高める
バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理などを行い、免疫力を維持することが大切です。
⑶その他の治療方法
・口腔内洗浄
カンジダの感染が広がるのを防ぐため、口腔内を洗浄することも有効です。食後にうがいをすることで、感染のリスクを減らせます。
・抗菌治療
もし口腔カンジダ症が他の細菌感染と併発している場合、抗菌薬が処方されることもあります。
・免疫抑制薬の調整
免疫抑制療法を受けている患者では、治療薬を調整することが必要な場合もあります。免疫力が低いとカンジダ症が悪化するため、医師と相談し、薬剤の見直しを行うことが重要です。
⑷予防策
・口腔内の乾燥を防ぐ
口腔内が乾燥しないように、特に寝ている間に唾液が減少しないよう心がけるとよいでしょう。水分をしっかり摂取し、適切な湿度を保つことが大切です。
・タバコを控える
喫煙は口腔カンジダ症のリスクを高める要因となるため、喫煙習慣がある場合は禁煙を試みることが勧められます。