「蓄膿症(副鼻腔炎)で耳鼻科に何度通っても改善しない」「薬を飲むと一時的に楽になるけど、すぐ再発する」——そんな経験はありませんか?実は、副鼻腔炎の中には歯が原因となる「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」と呼ばれるタイプがあります。歯科を受診せずに耳鼻科だけで治療を続けても、原因の歯が残っている限り根本的な解決にはならないことがあります。本記事では、歯科医師の立場から歯性上顎洞炎の症状・原因・治療法をわかりやすく解説します。
🤧 耳鼻科で治らない蓄膿症に注意
蓄膿症とは、鼻の周囲にある「副鼻腔」と呼ばれる空洞に膿が溜まる病気で、正式には「副鼻腔炎」と言います。一般的には風邪やアレルギー性鼻炎などが原因で起こると思われていますが、実は歯の病気が引き金になるケースが少なくありません。
歯が原因の上顎洞炎は「歯性上顎洞炎」と呼ばれ、副鼻腔炎全体の約5〜40%に存在するとされており、研究によって幅があるものの無視できない割合です。最近の報告では、副鼻腔炎全体の7割が歯が原因の上顎洞炎とする見解もあります。ただしこの数字には研究間で大きな幅があり、歯が原因であると考えられる症例は40.6%とも72.6%とも言われています。
⚠️ こんな場合は歯が原因かもしれません
- 耳鼻科で治療を受けているが、なかなか蓄膿症が改善しない
- 抗生剤を飲むと一時的に楽になるが、すぐに再発する
- 片側だけ鼻が詰まる・臭い鼻水が出る
- 上の奥歯に以前から違和感・痛みがある
- 神経を抜いた歯や、根の治療をした奥歯がある
🦷 上顎洞と歯の意外な近さ
なぜ歯が蓄膿症の原因になるのか——それを理解するには、上顎洞と歯の位置関係を知ることが大切です。
歯の歯根部は上顎洞と薄い板状の骨で仕切られています。歯と歯槽骨は「1階」、上顎洞は「2階」の一軒家にたとえることができます。1階の炎症が2階に移ったり、2階の炎症が歯の痛みとして感じられる場合もあります。

上の奥歯(特に第一大臼歯・第二大臼歯)の歯根先端は、上顎洞の底面にごく近い位置にあり、人によっては歯根が上顎洞内に入り込んでいるケースもあります。虫歯や歯周病が進行してこの部分に炎症・膿が生じると、薄い骨を越えて上顎洞に感染が広がり、蓄膿症を引き起こします。
👃 鼻性と歯性、どこが違う?
蓄膿症には「鼻が原因のもの(鼻性)」と「歯が原因のもの(歯性)」があります。症状が似ているため混同されやすいですが、いくつかの違いがあります。

「片側だけ」の蓄膿症は歯性を疑うサインです。歯が原因の場合は片側性、鼻が原因の場合は両側性のことが多いとされています。特に右または左どちらか一方だけに症状がある場合は、同側の上の奥歯に原因がある可能性を疑って歯科を受診することをお勧めします。
🔍 歯性上顎洞炎の原因となる歯・原因
原因となる歯としては、親知らずを含めて奥から3番目の歯(第一大臼歯)が最も多く、奥から2番目の歯(第二大臼歯)と合わせて原因の80%を占めるといわれています。

具体的な原因のメカニズム
① 根尖病巣(こんせんびょうそう)・根管治療後の再感染
歯性上顎洞炎は、主に根管治療済みの歯や神経が壊死した歯が原因で起こる上顎洞の炎症であり、健全な歯が原因となることはありません。「神経を抜いた歯」や「神経が死んでいる歯」の根の先の炎症が、すぐ上にある上顎洞に広がることで発症します。長年放置した根の病気が知らぬ間に上顎洞に波及しているケースが多くみられます。
② 歯周病
歯周病の場合は、歯周ポケットという歯と歯ぐきの隙間の部分から歯周病菌が入り込み、徐々に歯槽骨を溶かし、膿をためるようになります。重度の歯周病が上顎洞底付近まで進行した場合に発症することがあります。
③ インプラント関連
インプラント治療などの歯科治療に関連して発症するケースもみられます。上顎洞に近い部位へのインプラント埋入や、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)後に発症することがあります。インプラント周囲炎が進行して上顎洞に達するケースも報告されています。
「神経を抜いた歯は痛みを感じない」ため注意が必要です。根管治療済みの歯は痛みのセンサーがないため、根の先に膿が溜まっていても自覚症状がないまま上顎洞に炎症が広がることがあります。通常のレントゲンでは見えにくい病変も、CTを撮影することで早期に発見できることがあります。定期的な検診とCTによる確認が早期発見の鍵です。
✅ こんな症状は要注意!セルフチェック
以下の項目で当てはまるものをチェックしてみてください。

🏥 治療の流れ
歯性上顎洞炎の治療は、歯科と耳鼻科が連携して行うことが基本です。耳鼻科だけ、あるいは歯科だけでは根本的な解決に至らないことが多いため、両方を受診することが重要です。
症状などから歯性上顎洞炎が疑われる場合、X線検査やCT検査などの画像検査が行われます。歯やインプラントの状態、上顎洞の状態などを確認します。いわむら歯科では院内にCTを設置しているため、歯根先端と上顎洞の位置関係・根尖病巣の広がりを院内で即日確認することが可能です。他院への紹介なしに精密な診断ができます。
治療は、まずは抗菌薬による薬物療法、原因となる歯に対する歯科治療が行われます。マクロライド系抗菌薬の少量長期投与が行われることが多いですが、ML療法(マクロライド療法)のみでは改善しにくいケースもあり、歯科治療の併用が重要です。
根管治療の再治療・歯周病治療・場合によっては抜歯が必要になることがあります。ESS(内視鏡下鼻副鼻腔手術)と歯科治療の組み合わせで有意な改善が認められたという臨床データもあり、早期の歯科介入が重要です。
重症例や薬物療法で改善しない場合は、内視鏡による上顎洞洗浄・手術が行われます。歯科治療で原因を取り除いた後に行うことで、より良い結果が期待できます。
治療後も定期的な歯科検診・レントゲン確認が再発予防に重要です。根の病気は無症状で再発することがあるため、継続的なフォローが必要です。
⚠️ 放置すると危険なケースも
- 進行すると鼻腔や他の副鼻腔にも感染と炎症が広がり、まれに髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
- 痛みが少ないからといって放置すると、気づかないうちに上顎洞内の炎症が広がるリスクがあります。
- 神経を抜いた歯は痛みを感じにくいため、症状が出にくいまま進行することがあります。
❓ よくある質問
善するケースもあります。ただし、重度の歯周病や歯根破折が原因の場合は抜歯になることもあります。まず歯科でCTを含む精密な検査を受け、治療方針を相談することをお勧めします。
Q:耳鼻科と歯科、どちらに先に行けばいいですか?
Q:インプラントが原因でも歯性上顎洞炎になりますか?
📝 まとめ
- 蓄膿症(副鼻腔炎)の中には、歯が原因の「歯性上顎洞炎」が含まれる。その割合は研究によって幅があるが少なくない
- 上の奥歯(特に6番・7番)の歯根先端は上顎洞に非常に近く、根の炎症・膿が波及して発症する
- 片側だけの蓄膿症・強い悪臭の鼻水・耳鼻科で治らない場合は歯性を疑うサイン
- 原因は根尖病巣・歯周病・根管治療後の再感染・インプラントなど多岐にわたる
- 治療は歯科と耳鼻科の連携が必須。原因歯の治療なしに耳鼻科だけで治療しても再発しやすい
- 神経を抜いた歯は痛みを感じにくいため、定期検診・レントゲンで早期発見が大切
最後までお読みいただきありがとうございます。
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