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セメント質剥離とは?歯周病や歯根破折と間違えやすい病態を解説|いわむら歯科|瑞穂区中山町の歯医者

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セメント質剥離とは?歯周病や歯根破折と間違えやすい病態を解説

こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科院長の岩村です。

定期検診で「急に歯周ポケットが深くなっている」「歯ぐきが腫れて膿が出ている」と指摘されたとき、その原因が歯周病でも歯根破折でもなく「セメント質剥離」であるケースがあります。あまり聞き慣れない病名かもしれませんが、見逃すと抜歯につながる可能性もある病態です。

本記事では、セメント質剥離の原因・症状・診断の難しさ・治療法について、歯科医院の視点から分かりやすく解説します。

セメント質とは

セメント質とは、歯根の表面を覆っている薄く硬い組織のことです。歯を支える歯根膜と歯を結びつける役割を担っており、いわば「歯の根の外壁」のような存在です。建物にたとえるなら、外壁に貼られたタイルのようなイメージに近いといえます。

このセメント質が何らかの原因で歯根表面から剥がれ落ちてしまう状態を「セメント質剥離(セメント質剥離片形成)」と呼びます。

セメント質剥離の主な原因

セメント質剥離の発生には、内的要因と外的要因の両方が関わっていると考えられています。

咬合性外傷(過大な噛み合わせの力)

歯ぎしりや食いしばりなど、慢性的に過大な咬合力がかかることで、セメント質が肥大化し、その後剥離を起こすことがあります。多くの症例報告で、咬合性外傷や過大な咬合力がセメント質剥離の潜在的な原因の一つとして考察されています。研究者のFanらは、セメント質剥離を外傷性咬合の臨床的な指標として提案しており、噛み合わせの負担が発生要因として重視されていることがうかがえます。

加齢による組織の劣化

セメント質剥離は加齢によって組織が劣化することでも起こりやすくなるとされています。年齢を重ねるにつれてセメント質そのものの強度や柔軟性が低下し、些細な力でも剥離が生じやすくなると考えられています。

従来考えられていたリスク因子の見直し

以前は「男性」「高齢者」「前歯」「無髄歯(神経を取った歯)」がセメント質剥離の代表的なリスク因子とされてきました。しかし近年の報告では、性別や年齢との相関は必ずしも強くないという結果も出ており、根管治療の既往とセメント質剥離の発生との間にも有意な相関は認められていません。一方で、咬合性外傷や過大な咬合力についてはある程度の相関が確認されており、症状を悪化させる要因としてコントロールが必要とされています。

セメント質剥離の症状

セメント質剥離は、自覚症状がないまま静かに進行することが多いという特徴があります。多くの場合、定期検診での歯周ポケット検査によって、前回まで正常だった歯に突然深いポケットが見つかることで発覚します。

代表的な症状には、次のようなものが挙げられます。

  • 歯ぐきの腫れ・出血・排膿(膿が出る)
  • 特定の部位に限局した深い歯周ポケット(6mm以上)
  • 歯の動揺(グラつき)
  • 前歯における歯の挺出(歯が伸びたように見える)
  • セメント質の肥大

腫れが起こりやすい部位は歯肉辺縁部で、上顎前歯部の場合は根尖部(歯根の先端付近)にも症状が及ぶことがあります。好発部位は大臼歯部と上顎前歯部で、好発年齢は中高年とされています。

剥がれ落ちたセメント質の破片は、身体にとって異物として認識され、周囲の歯槽骨に炎症性の吸収を引き起こします。その結果として歯肉の腫脹や歯周ポケットの形成、プロービング時の出血、排膿といった症状が現れると考えられています。

診断が難しい理由

セメント質剥離の大きな特徴は、歯周病や歯根破折と非常によく似た症状を示すため、診断が難しいという点です。エックス線写真だけでは判断が難しく、実際には歯周外科治療を行う際に、初めてセメント質剥離であったと確認されるケースも少なくありません。

鑑別のポイントとしては、腫脹(膿瘍の形成)、深くて狭い歯周ポケット、局所的な骨吸収、咬合性外傷の有無などが挙げられます。これらが揃う場合には、通常の歯周病とは別にセメント質剥離を疑うことが重要です。

なお、2017年に開催されたAAP(米国歯周病学会)とEFP(欧州歯周病連盟)共催のワールドワークショップでは、セメント質剥離は歯周病に罹患していない方に生じる歯周膿瘍の原因の一つとして、「エナメル真珠」や「発達した根面溝」と並ぶ稀な解剖学的異常として分類されています。ただし、この分類については科学的根拠がまだ十分ではないという指摘もあり、今後さらなる研究が求められている分野です。

セメント質剥離の治療法

セメント質剥離については、国内外を含めて文献がまだ乏しく、確立された治療ガイドラインは存在しません。そのため、現時点で確固たる標準治療があるわけではありませんが、一般的には次のような対応が取られます。

  1. 剥離したセメント質の除去:原因となっている剥離片を可能な限り取り除きます。
  2. 歯根面の清掃:剥離した歯根表面をできるだけきれいに清掃し、感染源を除去します。
  3. 歯周組織再生療法:状態によっては、除去後に歯周組織の再生を促す外科的処置を行います。
  4. 抜歯:症状が重度で保存が難しいと判断された場合には、抜歯が選択されることもあります。

治療上の注意点として、剥離したセメント質を除去しても、残存したセメント質が再び剥離してしまうことがある点が挙げられます。また前歯に発生した場合は歯の挺出を伴うことが多く、経過を慎重に観察しながら段階的に治療を進めていく必要があります。

生きた神経がある歯(生活歯)にもセメント質剥離は起こり得るため、歯周病由来の症状と安易に判断して、不要な抜髄処置(神経を取る処置)を行わないよう、慎重な診断が求められます。

早期発見のために大切なこと

セメント質剥離は自覚症状に乏しく、進行してから発覚することが多い病態です。だからこそ、定期的な歯科検診で歯周ポケットの深さの変化を継続的にチェックしておくことが、早期発見の鍵になります。

「これまで問題のなかった歯に急に深い歯周ポケットができた」「特定の歯だけ腫れや排膿を繰り返す」といった場合には、通常の歯周病治療だけでなく、セメント質剥離の可能性も視野に入れた診断が必要です。可能な限り早期に発見することで、不要な抜髄処置や早すぎる抜歯を避けられる可能性が高まります。

歯ぐきの腫れや出血、特定の歯のグラつきが気になる方は、自己判断せずに歯科医院での精密検査をおすすめします。当院では歯周組織の状態を丁寧に確認し、歯周病・歯根破折・セメント質剥離を含めた総合的な診断を行っておりますので、気になる症状がある方はお早めにご相談ください。


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