こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科院長の岩村です。
帯状疱疹は「皮膚の病気」というイメージが強いですが、実は歯科と非常に関係の深い疾患です。特に顔面や口腔内に症状が出るケースでは、患者さんが最初に歯科医院を受診することも少なくありません。
本記事では、帯状疱疹の基礎知識から歯科領域との関係、鑑別診断、治療時の注意点、ワクチン、そして歯科医院での対応方法まで詳しく解説します。
1. 帯状疱疹とは何か
帯状疱疹は、**水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)**が再活性化することで発症します。これは、子どもの頃にかかった「水ぼうそう」の原因ウイルスと同じものです。
代表的な疾患として知られているのが:
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水痘(みずぼうそう)
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帯状疱疹
水痘にかかった後、ウイルスは体内の神経節に潜伏します。そして加齢やストレス、免疫低下などをきっかけに再び活性化し、神経に沿って炎症を起こします。
2. なぜ歯科と関係があるのか
帯状疱疹は「神経に沿って発症する」という特徴があります。
顔面領域では、三叉神経が関与します。三叉神経は以下の3枝に分かれています:
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眼神経
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上顎神経
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下顎神経
このうち、上顎神経や下顎神経に発症すると、歯や歯ぐきに強い痛みが出ることがあります。
そのため、患者さんは
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「歯がズキズキする」
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「神経を抜いた歯が痛む」
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「虫歯かもしれない」
と考え、歯科医院を受診するケースが多いのです。
3. 歯痛と誤認される帯状疱疹
帯状疱疹の初期症状は、皮疹が出る前の「前駆痛」です。
前駆痛の特徴
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片側のみの痛み
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ピリピリ、チクチクする神経痛様疼痛
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冷温刺激とは無関係
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持続的で強い痛み
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鎮痛剤が効きにくい
歯科的な所見が乏しいにもかかわらず強い痛みを訴える場合、帯状疱疹を疑う必要があります。
4. 口腔内に出る帯状疱疹
三叉神経第2枝(上顎神経)や第3枝(下顎神経)に発症すると、口腔粘膜にも水疱が出現します。
口腔内の特徴
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片側性(正中を越えない)
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小水疱が破れて潰瘍になる
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強い接触痛
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歯肉・口蓋・頬粘膜に出現
アフタ性口内炎との鑑別が重要です。
5. ハント症候群との関連
耳周囲や顔面神経に関連する帯状疱疹として知られているのが:
ラムゼイ・ハント症候群
特徴は:
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耳の水疱
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顔面神経麻痺
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味覚障害
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めまい
歯科医院では「顔が動かしにくい」「味が分からない」と相談されることがあります。
6. 帯状疱疹後神経痛(PHN)
特に注意が必要なのが、帯状疱疹後神経痛です。
帯状疱疹後神経痛
皮疹が治った後も数か月〜数年にわたり神経痛が続きます。
歯科的処置をしても改善しない慢性歯痛の背景に、PHNが隠れていることがあります。
7. 歯科治療との関連
① 抜歯や外科処置が誘因になる可能性
強いストレスや侵襲は免疫を低下させるため、帯状疱疹の誘因になることがあります。
② 帯状疱疹発症中の歯科治療
原則として:
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水疱期は緊急処置のみ
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標準予防策の徹底
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エアロゾル飛散への配慮
8. 診断のポイント(歯科医院でできること)
以下のチェックが重要です:
✔ 片側性の痛みか
✔ 神経支配領域に一致しているか
✔ 皮膚や口腔内に水疱がないか
✔ 発熱や倦怠感がないか
疑わしい場合は、速やかに皮膚科へ紹介します。
9. 治療(医科)
抗ウイルス薬:
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アシクロビル
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バラシクロビル
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ファムシクロビル
発症から72時間以内の投与が重要です。
10. ワクチンについて
現在、日本で使用されている代表的ワクチン:
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シングリックス
50歳以上で接種が推奨されています。
歯科医院でも「ワクチン接種を勧めていますか?」と聞かれることがあります。
11. 高齢社会と帯状疱疹
日本は超高齢社会であり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。
高齢患者さんの多い歯科医院では、遭遇率は今後さらに高まります。
12. 歯科医院での実践的対応まとめ
① 疑う力を持つ
原因不明の片側性歯痛は帯状疱疹を鑑別に入れる。
② 不必要な抜髄を避ける
誤診による過剰治療を防ぐ。
③ 医科歯科連携
迅速な紹介体制を構築。
④ 患者教育
「歯が原因ではない痛みもある」ことを説明。
13. まとめ
帯状疱疹は皮膚疾患でありながら、歯科と密接に関係する疾患です。
特に重要なのは:
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片側性の原因不明歯痛
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神経支配に一致した痛み
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皮疹出現前の前駆痛
歯科医師が早期に気づくことで、患者さんの後遺症リスクを大きく下げることができます。
これからの歯科医療では、**「歯だけを見る」のではなく「神経と全身を見る視点」**がますます重要になります。
帯状疱疹を正しく理解し、地域医療の一端を担う歯科医院として、適切な診断と連携を図る必要があります。