こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科院長の岩村です。
皆さんは虫歯をそのまま放置してしまった経験はありますでしょうか?
痛いけど歯科医院に行くほど痛くもない、虫歯に気づいているけど生活に支障が出ていない、歯科医院に行くのが億劫
そのような方ってたくさんおられると思います。
以前、患者さんにいわれた言葉で今でも忘れられないのが
「虫歯を治さなかったら早く死んでしまうなら、治療はします。だけど、食事にちょっと不便するぐらいなら我慢してしまうんです」
という言葉です。
確かに寿命に関わるといわれると治療しなくてはと思ってしまう方は多いと思います。
今回はそんな論文を紹介したいと思います。
「Assessing the effectivity of counting the number of teeth with their conditions to predict mortality: The OHSAKA study」
というタイトルの論文で大阪公立大学大学院看護学研究科の大槻先生の研究グループが「BMC Oral Health」という雑誌で2025年に掲載されたものです。
以下に簡単な要約を記載します。
研究背景
近年、口腔健康状態が全身の健康および死亡リスクと関連することが報告されています。口腔の健康状態と死亡リスクには関連があることが知られており、日本では1989年より「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020運動が展開されています。特に残存歯数は死亡率の指標として広く用いられてきたが、歯の「量」だけでなく歯の「質(疾患の有無)」を加味した評価の有用性については十分に検証されていません。
研究目的
本研究(OHSAKA study)は、
残存歯数に歯の状態(健全歯・齲蝕歯・歯周病罹患歯など)を組み合わせた評価指標が、全死亡リスクの予測能を向上させるか
を検証することを目的としています。
研究方法(概要)
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研究デザイン:前向きコホート研究
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対象:75歳以上の高齢者190,282人
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口腔評価:
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残存歯数
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各歯の状態(健全歯、未治療齲蝕歯、補綴歯、歯周疾患罹患歯など)
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アウトカム:全死亡
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解析:
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Cox比例ハザードモデルを用いて、
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残存歯数のみ
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残存歯数+歯の状態
のモデルを比較し、死亡リスクとの関連および予測精度を評価
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年齢、性別、喫煙、基礎疾患などの交絡因子を調整
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主な結果(概念的)
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残存歯数が少ないほど全死亡リスクは有意に上昇した
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同じ歯数であっても、
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健全歯が多い群に比べ
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齲蝕歯や歯周病罹患歯が多い群では
死亡リスクが高かった
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残存歯数に歯の状態を加えたモデルは、
歯数のみのモデルよりも死亡予測能が高かった
考察
歯の本数は咀嚼能力や栄養摂取能の指標である一方、歯の状態は慢性炎症負荷や口腔衛生行動、医療アクセスを反映すると考えられる。
本研究結果は、口腔内の慢性炎症や未治療歯科疾患が、全身の健康および生命予後に影響を及ぼす可能性を支持するものである。
結論
残存歯数と歯の状態を組み合わせた口腔評価は、全死亡リスクの予測において有用であり、従来の歯数単独評価を上回る指標となり得る。
本研究は、歯科保健介入が全身の健康増進および死亡予防に寄与する可能性を示唆している。
どうでしょうか?これまで歯周病が全身状態に影響を及ぼすといった報告は数多くありましたし、残存指数や咀嚼能力が健康寿命に影響を及ぼすといった報告も数多くありました。この論文はう蝕を治療していないと、寿命に影響を及ぼす可能性を示唆した希少な報告だなと思います。
皆様もお口の中に虫歯があるかもと思ったら、歯科医院で一度診てもらう習慣をつけて頂ければと思います。