こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科の岩村です。
今回は「入れ歯洗浄剤」についてです。歯科医院で使用をお薦めされることも多いですが、色々商品があるので、どれを使えばいいのか迷ってしまいますね。その辺りを踏まえて解説していきます。
■ 入れ歯洗浄剤とは
入れ歯(義歯)に付着する 歯垢・食べかす・細菌・カビ(カンジダ)・着色汚れ を除去するための専用の洗浄剤です。
歯磨き粉で物理的にゴシゴシ磨くと 入れ歯に傷がつきやすい ため、化学的に汚れを落とす入れ歯洗浄剤が推奨されます。
■ 入れ歯洗浄剤の主な種類
① 酸素系(発泡タイプ)——最も一般的
過酸化物 を利用して水に溶かすと泡が発生し、入れ歯表面の汚れや細菌を分解します。
例:ポリデント、キラリア、ライオン「デントヘルス」など
特徴
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除菌力が高い
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食べかす・ステイン除去に有効
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毎日使用に向く
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金属床タイプにも使えるものが多い(商品により異なる)
② 酵素系
酵素(プロテアーゼなど)がタンパク汚れ を分解します。
特徴
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ニオイ・タンパク質汚れに強い
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材質に優しく、長時間つけ置きに向く
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発泡系より除菌力は弱め
③ 中性タイプ(マイルド)
化学反応が強すぎないタイプで、敏感な素材に使いやすい。
部分入れ歯の 金属腐食が心配な場合 におすすめ。
④ 専門クリーナー(次亜塩素酸系など)
歯科医院向けの強力な除菌剤も存在。
ただし家庭で頻用すると 入れ歯を傷めたり変色を起こす 可能性があるため要注意。
■ 成分の例と役割
| 成分 | 役割 |
|---|---|
| 過硫酸塩・過酸化物 | 発泡 → 汚れ分解・除菌 |
| 重炭酸ナトリウム | 洗浄を助ける |
| 酵素(タンパク分解酵素) | 歯垢・食べカスの分解 |
| キレート剤(EDTAなど) | 歯石・金属イオン汚れ除去 |
| 除菌成分(塩化物など) | 除菌強化 |
| 香料 | ニオイ対策 |
※金属床の人は「過硫酸塩不使用」を選ぶと安心。
■ 入れ歯洗浄剤の正しい使い方
① 使用前の準備:入れ歯を軽く洗う
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水でざっとすすぐ
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柔らかい義歯ブラシで軽くブラッシング
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食べかす
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歯垢(ぬめり)
を先に落とすことで 洗浄剤の効果が高まる。
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※注意
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普通の歯磨き粉は使わない
研磨剤で細かい傷がつき、汚れがたまりやすくなるため。
② ぬるま湯で洗浄液をつくる
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温度:35〜40℃程度(ややぬるい程度)
→ 熱すぎると 樹脂が変形。
→ 冷たすぎると洗浄成分が働きにくい。 -
コップや入れ歯ケースに水を入れ、錠剤・粉末・液体洗浄剤を入れる。
コツ
洗浄剤を入れた後しっかり溶けるまで数秒待つ。
③ 入れ歯を完全に沈めてつけ置く
洗浄剤が全体に触れなければ効果不十分です。
つけ置き時間の目安
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一般的な発泡錠剤:5〜10分
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汚れが強い場合:20〜30分
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長時間用(酵素系など):一晩つけ置きも可能
→ 製品により大きく異なるため、必ず使用時間を守ることが大切。
理由
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長すぎる → 金属部分が変色する場合がある
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短すぎる → 除菌・汚れ落としが不十分
④ 取り出した後はしっかりすすぐ
流水で 30秒〜1分ほど しっかりすすぐ。
理由
洗浄剤の残留は
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舌や粘膜のヒリつき
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口内炎
を引き起こす可能性があるため。
⑤ 乾燥させない(重要)
入れ歯は乾燥に弱い。
洗浄後は 水を入れた義歯ケース で保管する。
なぜ乾燥がダメか?
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材質が収縮 → 適合が悪くなる
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変形による痛み・外れやすさの原因
入れ歯洗浄の「毎日のルーティン」
毎日
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夜:洗浄剤につけ置き → すすぐ → 水中保管
週1〜数回
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義歯ブラシでしっかりブラッシング
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歯科医院でのプロ洗浄は半年〜年1回程度がおすすめ
洗浄剤の使い方でよくある間違いと理由
❌ 歯磨き粉をつけて磨く
→ 傷つく → 茶渋や細菌が入り込み、汚れやすくなる。
❌ 熱湯を使う
→ 樹脂が変形してフィットしなくなる。
❌ 金属入り部分入れ歯に「過硫酸塩入り」を毎日使用
→ 金属変色のリスク。
→ 可能なら「金属対応」「過硫酸塩不使用」を選ぶ。
❌ つけ置き時間を守らない
→ 長すぎも短すぎもNG。
❌ 洗浄後すすがない
→ 口内炎・舌の刺激の原因。
洗浄剤の使い方の目的は“3つ”
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食品残渣・タンパク汚れ除去
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除菌し、カンジダなど真菌の繁殖を抑える
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ニオイや着色の予防
特に高齢者では、汚れた入れ歯は 誤嚥性肺炎リスクを高める ため、毎日のケアが非常に重要です。
■ 選ぶときのポイント
1. 入れ歯の材質・構造を確認する
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部分入れ歯(クラスプ・金属付き)
→ 金属が入っている入れ歯には、金属を傷めたり腐食させたりしないタイプの洗浄剤を選ぶ必要があります。歯科医も「部分入れ歯用」と書かれているものを推奨する場合が多い。 -
総義歯(プラスチック/レジン)
→ より強力な洗浄成分(発泡、漂白など)が使われていても、変形のリスクが少ない洗浄剤を選べる。 -
シリコン素材・マウスピースに近いもの
→ 酵素系、生薬系、界面活性剤系など低刺激タイプが向いている。強い漂白や過酸化物系は素材劣化を引き起こす可能性がある。
2. 目的を明確にする
歯科医も「入れ歯を洗浄する目的をまず明確に」することを勧めています。
以下はよくある目的:
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細菌・カビ(カンジダ)を除去したい
→ 除菌力が高い成分(過酸化物系・次亜塩素酸系など)が有効 -
ニオイを取りたい
→ 除菌+消臭成分があるタイプ -
茶渋・タバコの着色汚れを落としたい
→ 漂白力が強めのもの(ただし素材への影響に注意) -
毎日の軽いメンテナンス
→ 優しい成分+つけ置き時間が短めのものが使いやすい
3. 主成分・成分タイプによる特徴
入れ歯洗浄剤は成分で大きく性質が変わる。
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過酸化物系(発泡タイプ)
→ 一般的で洗浄力が高め。発泡で汚れを浮かせる。 -
酵素系
→ タンパク汚れを分解しやすく、においや食べかすに強い。漂白は弱い。 -
次亜塩素酸系
→ 強力な除菌力・漂白力があるが、長時間使用や高濃度だと入れ歯材質を傷めるリスクがある。 -
中性/マイルド系
→ 特に金属や柔らかい素材に対して安全性が高め。 -
界面活性剤・生薬系
→ 優しく洗浄、特定のニーズ(消臭、たんぱく質汚れなど)に対応。
4. 使用頻度・つけ置き時間
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入れ歯洗浄剤は 1日1回の使用が推奨されることが多い。
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つけ置き時間は製品によって異なるので、ラベルをよく確認:
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短時間(5〜10分)タイプ → 日常使いに便利
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長時間/一晩タイプ → 頑固な汚れに
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長時間つけ過ぎると、材質にダメージを与える製品もあるので注意。
5. 安全性・副作用の確認
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金属対応かどうか:部分入れ歯など金属がある場合は「金属対応」「防錆成分あり」の製品を選ぶ。
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乾燥への配慮:洗浄後も入れ歯を完全に乾燥させず、水中で保管したほうが変形を防げる。
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誤飲リスク:洗浄液を飲み込まないよう注意。特に強アルカリ性の製品を誤って飲むと危険。
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保管期限:錠剤タイプは吸湿で効果が落ちる場合があるので、包装を破ったら早めに使う。
6. 使いやすさ・利便性
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フォーム(泡)タイプ:ポンプで泡を出すタイプは手軽。
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錠剤タイプ:コストパフォーマンスに優れ、携帯しやすい。
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香り付き:ミントなど、使った後のにおいを気にする人には香りありが好ましい。
入れ歯洗浄剤の具体的なおすすめ例
いくつか代表的な製品をあげて、それぞれの用途に応じた選び方も示します:
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ポリデント NEO(入れ歯洗浄剤)
→ 発泡・漂白力があり。日常使い向き。 -
ロート製薬 ピカ 入れ歯洗浄剤
→ 次亜塩素酸系で強い除菌力と漂白力。着色汚れが気になる人向け。 -
ディープクリーン シュッシュデント 部分入れ歯用
→ 泡タイプ。部分入れ歯に使いやすい。 -
小林製薬 パーシャルデント 洗浄フォーム
→金属がある部分義歯でも使いやすいジェル/フォーム。 -
MK デントアクア 部分入れ歯用 洗浄錠
→錠剤タイプ。部分入れ歯向け。
■ 歯科医院で行うプロクリーニング
自宅で落ちない 頑固な歯石・着色・カビ は歯科医院で超音波洗浄や専門薬剤で除去可能。
半年〜1年に1度のプロのメンテナンスがおすすめです。