こんにちは、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分、いわむら歯科院長の岩村です。
健常者の呼気の中には50~200程度の有機化合物が検出されるといわれており、各々の量やバランスによって様々な臭いとなることがわかっています。今回は代表的な口臭原因ガスの臭いの特徴と、どのように発生するのかを解説していきます。
※以下に記載してある情報だけを基にして自己判断で医療機関(特に医科)に行くことは絶対に避けてください。最寄りの口臭外来がある歯科医院に一度診察してもらい、医科への対診が必要と判断された場合にのみ、医科での診察を受けるようにしてください。そうしないと、保険診療ではなく自費診療となったり、検査の必要がないと医師が判断した場合は検査拒否の対象となります。瑞穂区や近隣の昭和区、熱田区で口臭でお悩みの方は当院で一度相談して頂けると非常に助かります。
①硫化水素
硫化水素は腐った卵のような臭いだったり、硫黄温泉の臭いと表現される事が多いです。硫化水素は口腔内にある細菌が口腔内に存在するタンパク質を分解して出来るガスです。口腔内の硫化水素濃度が高い場合には、口腔内を清潔にして口腔内細菌を減らす治療が必要となります。
②メチルメルカプタン
メチルメルカプタンは玉ねぎの腐った臭いと表現されます。メチルメルカプタンは口腔内にある細菌のなかでも嫌気性菌によって産生されやすい事がわかっており、歯周病や厚い舌苔などが原因とされています。そのため、歯周治療や舌清掃指導を行うようにしています。
③ジメチルサルファイド
ジメチルサルファイドはキャベツの腐った臭いと表現されます。海の潮臭さとも言われることもあります。ジメチルサルファイドはメチルメルカプタンがメチル化されると発生する事がわかっており、硫化水素やメチルメルカプタンが口腔内に多い状態だと発生しやすいとされています。また、消化器のトラブル(胃、小腸、大腸)や肝疾患がある場合にも発生する事があります。ジメチルサルファイドは水に溶けにくい性質なので、肺まで血管でガスが運ばれ、呼気として口腔外に出るとされています。その為、ジメチルサルファイド濃度だけが高い場合、内科への対診が必要となります。
④スカトール、インドール
スカトール、インドールは糞便臭と表現されます。しかし、かなり低濃度だとジャスミンの香りだといわれています。スカトール、インドールは主に大腸菌によって代謝される揮発性窒素化合物で、腸管壁から吸収されて、肺まで血管でガスが運ばれ、呼気として口腔外に出るとされています。その為、医療機関での官能検査で強い臭いを認める場合は大腸検査をすることもあります。
⑤カダベリン
カダベリンは動物の死体のような腐敗臭と表現されます。動物の体組織が腐敗する際にタンパク質の加水分解によって生成されますが、腐敗の過程そのものには関与しません。カダベリンは細胞分裂に必須な増殖因子です。また、RNAを含む核酸やタンパク質の合成を促進する作用があるとされ、新陳代謝を活発にする効果や老化を防ぐ効果、動脈硬化を予防する効果があります。リジン代謝異常のある患者の尿からは、カダベリン濃度が上昇していることが確認されています。さらに、カダベリンは細菌性膣炎における悪臭の原因物質の一つです。また、がん性皮膚潰瘍の際の悪臭の原因物質の一つでもあります。
⑥アンモニア
アンモニアは鼻をつく刺激臭と表現されます。肝臓がアンモニアを尿素に変える機能が低下すると、血中にアンモニアが蓄積されます。
このアンモニアが呼気として排出されることで、独特のツンとしたにおいが発生します。肝硬変や劇症肝炎といった肝疾患に罹患している場合、アンモニア臭が顕著になることがあります。
また、腎不全や尿毒症などの尿路系疾患もアンモニア臭を引き起こす可能性があります。これらの疾患では、体内の老廃物が適切に排出されず、血液中に蓄積します。その結果、体全体にアンモニア臭が漂うだけでなく、口臭としても強く感じられることがあります。特に、慢性的な腎機能低下のある方は、この症状が進行しやすい傾向があります。その為、アンモニア臭が強い場合は内科への受診をおすすめする場合もあります。
⑦トリメチルアミン
トリメチルアミンは魚の腐敗臭と表現されます。摂取した食物を体内で消化分解した際に発生したトリメチルアミンが分解されず、汗や尿、呼気の中に排出されてしまう疾患である、トリメチルアミン尿症が原因疾患として挙げられます。抜本的な治療法はなく、トリメチルアミン尿症患者はトリメチルアミン前駆物質であるコリンやレチシン等の含有量の多い食品(海産魚介類、卵黄、乳製品、豆類、肉類など)の摂取を控えるように努力するしかないといわれています。
⑧イソ吉草酸
イソ吉草酸は靴下の臭い、チーズ臭と表現されます。イソ吉草酸は加齢臭の原因物質の一つと言われています。また、指定難病であるイソ吉草酸血症の罹患により発生する事もあります。イソ吉草酸血症は新生児期の哺乳不良や嘔吐、意識障害などの症状があり、50万人に1人の割合と言われています。
⑨酪酸
酪酸は銀杏のような臭い、雑巾のような臭いと表現されます。歯周病の原因菌であるFusobacterium nucleatumが産生することがわかっています。また、腸内細菌による食物繊維の発酵分解にて生成され、大腸粘膜上皮細胞のエネルギー源として使用され、大腸のバリア機能強化、腸内フローラの維持、ミネラル吸収促進、免疫機能の強化、肥満や糖尿病に対する効果、肝臓での代謝に利用などに関与しているとされています。
⑩プロピオン酸
刺激性のある酸っぱい臭いと表現されます。酪酸と同じく短鎖脂肪酸の一種で、腸内および体内で同様の効果が期待されます。
⑪アセトン
リンゴの腐ったような甘酸っぱいにおいと表現されます。アセトン臭の口臭は、ダイエットによる無理な食事制限、偏食、ストレス、朝食抜きなどで、体内にブドウ糖が不足したときにもおきます。また、糖尿病患者の息が甘酸っぱいにおいがするのも、アセトンの影響とされています。その為、生活習慣等の見直しが必要となる場合があります。詳しくは以前記載した「甘い口臭って知ってますか?」という記事を参照下さい。
甘い口臭って知ってますか? | いわむら歯科|瑞穂区中山町の歯医者
⑫アセトアルデヒド
青臭い刺激臭と表現されます。二日酔いした時はアセトアルデヒドと酢酸とアルコールの混ざった、非常にきつい口臭となりますので、お酒の飲みすぎには注意してください。
硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドが口臭の主な原因ガスであり、口臭測定器ではこれらのガスを個別に測定したり、総合値を測定します。
それ以外のガスは口臭の原因になりますが、かなりレアケースとなります。また、口臭外来でそれらの機器による濃度測定を行うことはしておらず、官能検査で診断する形となります。原因疾患があることで、口臭が発生する可能性は否定できませんが、口臭で疾患があるかの鑑別は出来ませんし、患者自身も原因疾患に心当たりがあることが多いです。当院では、問診表に記入してもらう際に内科への通院歴や治療歴を記載してもらうようにしています。