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親知らず、抜く?抜かない?|いわむら歯科|瑞穂区中山町の歯医者

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親知らず、抜く?抜かない?

こんにちわ、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分、いわむら歯科院長の岩村です。

今回は「親知らずって抜いたほうがいいの?抜かないほうがいいの?」そんな疑問に答えていこうかと思います。
なお、私は口腔外科の専門的な知識はないので、あくまでもいち歯科医師の私見になってしましますが・・・。

(親知らずとは)
まず、「親知らず」とは正式には「第三大臼歯」と呼ばれる奥歯のことです。通常、17〜25歳ごろに生えてくるため、「親が知らない間に生えてくる=親知らず」と呼ばれるようになりました。人によって上下左右の4本すべてある場合もあれば、1〜2本しかない人や、まったくない人もいます。当院では、初診の際に全体的なレントゲン写真を撮影するのですが、その際に初めて患者さんが自分に親知らずがないことに気づかれることが多々あります。現代人の顎(あご)は小さくなってきており、親知らずが正しく生えるスペースが足りないことが多いです。そのため、変な場所から生えてきたり(異所萌出)、一部分だけ生えていたり(半埋伏)、まったく生えてこない(完全埋伏)こともあります。

 

(抜かなくてもよい親知らずとは)
① 正しい向きでまっすぐ生えている
横や斜めに生えてなく、上下の歯としっかり噛み合っており、他の歯に悪影響を与えていない場合は抜く必要はありません。

② 完全に歯ぐきの外に出ている
一部分だけ出ている「半埋伏」の状態でないことも重要です。なぜなら、清潔に保ちやすく、虫歯や炎症のリスクが低くなるからです。

③ 虫歯や歯周病がない
親知らずはきれいに生えていてもなかなか磨きづらく、虫歯や歯周病のリスクが高いです。また、その手前の歯(第二大臼歯)に悪影響を与えていないかどうかも重要です。

④ 日常的に痛みや腫れがない
過去に炎症や痛みなどでトラブルを起こしたことがないかも重要です。きれいに歯磨きしていて清潔にしていたとしても、どうしても虫歯や歯周病になりやすい人はいらっしゃいますので、そのような人には日ごろトラブルがなかったかどうか問診で確認することも重要です。

⑤ 将来的に「移植」や「ブリッジ」、「入れ歯」のために使える可能性がある
将来、他の歯を失ったときに、親知らずを移植して活用できるケースもあります。また、ブリッジや入れ歯などの補綴治療に有効活用できる場合もあります。

⑥完全埋伏の場合も
完全埋伏でも、手前の歯(第2大臼歯)に影響を与えていなければ抜歯の必要はありません。考えられる影響としては虫歯、歯周病、歯並びなどがあります。歯並びに関しては前歯にまで悪影響を及ぼすという考え方がありますが、親知らずだけの影響で前歯にまで影響が出るとは考えづらいので、矯正歯科で指示がないようなら抜歯しない方が賢明かと思います。

⑦他の部位への影響も考えて
上顎の骨の中には、鼻の横に上顎洞という大きな空洞があります。この空洞は副鼻腔(鼻周囲の空洞)の一つで、もともと鼻腔と小さな穴で交通しています。鼻が悪くなると、ここに膿が貯まり、いわゆる蓄膿症が起きます。智歯の抜歯では、智歯の根と上顎洞の底との位置関係が重要です。歯の根が上顎洞内に突出している場合、抜歯により、上顎桐に穴があき、最終的に鼻腔まで交通しますので、ロから飲んだ水が鼻から出てしまう症状が出現します。こうした合併症が引きおこる事がありますが、頻度としては稀なものであり、もし穴が開いてしまった場合でも、ほとんどが自然閉鎖します。しかしながら、穴が一ケ月経っても閉鎖しない場合や上顎桐炎を合併し排膿(膿が出る)が続く場合は、穴を閉鎖する手術が必要です。
また、下顎の骨の中には、下歯槽管というトンネルがあり、下顎の後ろの方から下唇の斜め下ぐらいまで続いています。この中には神経と血管が走行しており、この神経(下歯槽神経といいます)は、骨の中のトンネルを出た後、下唇周囲まで枝を伸ばし、主に歯の感覚や、下唇とその周囲の感覚を担当しています。抜歯の際に問題になるのは、智歯の根の先と下歯槽管の位置関係です。根の先がトンネル内に突出していた場合、抜歯によりトンネル内に穴があき、神経血管の損傷の原因になります。血管損傷時には、強い出血が起こります。
このように事前に抜歯するリスクが高いと判断した場合は、抜歯しないほうがよいと考えます。

⑧全身状態も関係します
全身状態が悪い場合は抜歯を延期したり、中止する場合もあります。関連がありそうな病変としては
1. 心疾患(心臓病)
狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、人工弁置換などがあります。緊張や痛みによって血圧・脈拍が変動する可能性があり、心臓発作のリスクがあります。また、抗凝固薬(ワーファリン、DOACなど)服用中の場合は出血に注意しないといけません。 医科との連携、事前の休薬調整や出血管理が必要です。
2. 糖尿病
糖尿病に罹患していると感染しやすく、術後の治癒が遅れることがあります。また血糖コントロールが不良だと、感染や術後合併症のリスクが高い 術前の血糖値評価(HbA1c)が必要で、8.0以上ある場合は抜歯を中断すべきです。また、午前中の処置が望ましいです。
3. 高血圧
抜歯時の緊張や痛みで急激な血圧上昇 が起こり、 脳出血や心疾患のリスクがあります。そのため、重度高血圧の場合は処置延期が必要とされています。 処置前に血圧測定、140/90以上なら慎重に実施する必要があります。
4. 出血傾向がある疾患・薬物使用
血友病、肝疾患(肝硬変)、白血病、抗凝固薬・抗血小板薬の内服があると、止血困難 となり大量出血、再出血のリスクがあります。血液検査(PT, APTT, INR)、医師との事前相談が必要です。
5. 腎疾患(人工透析など)
 出血傾向、免疫低下、薬剤の代謝異常に注意が必要です。抗生剤・鎮痛薬の使用するさいには腎排泄性の薬剤にしないような配慮が必要です。透析のない日に抜歯をした方が良い時もあります。
6. 骨粗鬆症+ビスホスホネート薬やデノスマブ使用中
抜歯後に顎骨壊死(薬剤性顎骨壊死:MRONJ)が起こることがあります。特に静脈注射製剤はリスクが高いとされています。投薬歴の確認、必要に応じて処置前に休薬・口腔環境の徹底管理が必要なため、抜歯を延期する事があります
7. 肝疾患(肝硬変・慢性肝炎など)
 出血傾向、感染リスク、薬の代謝異常などがありますので、 処置の前に肝機能(AST, ALT, PT)を確認が必要となります。
8. 呼吸器疾患(喘息、COPDなど)
麻酔薬やストレスが発作誘発の引き金になりますので、長時間の仰臥位処置に注意が必要となります。 処置前の吸入薬準備、症状安定時に施術するなどの配慮が必要となります。
9. てんかん
 処置中の発作リスクがありますので、 発作誘因の回避(睡眠不足・ストレス)、発作の既往と間隔を確認が必要です。
10.
甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病など)
バセドウ病では緊張で甲状腺クリーゼ(命に関わる)の可能性があります。そのため、 甲状腺機能が安定してから処置します


上記も考えつつ親知らずを抜歯するか、しないかを判断します。そして、一番大事なのは
⑨患者さんの意思
患者さんが抜きたくないという意思があれば歯科医師は抜歯はしてはいけないと思います。なんで、抜歯しないのかなと思う場合も度々ありますが、患者ファーストで治療をすすめていきたいものです。