こんにちわ、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分、いわむら歯科の岩村です。
以前のブログで「歯ブラシの歴史」について紹介しました。
今回は「歯磨き粉の歴史」について紹介していきます!
🏺 古代エジプト(紀元前5000年頃〜)
歯磨き粉の最古の記録
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最も古い歯磨き粉の記録は、紀元前5000年頃の古代エジプトに遡ります。
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パピルスに記録されたレシピでは、歯の白さと清潔さを保つための混合粉末が紹介されています。
主な成分
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粉砕した牛の蹄(硬い研磨材)
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焼いた卵の殻(炭酸カルシウム:歯を削る目的)
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軽石(研磨作用)
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ミルラ(没薬)(殺菌・香り付け)
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酢や水(ペースト状にするため)
特徴
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非常に強力な研磨作用があり、現代人の感覚では「ゴリゴリ」した刺激の強いものでした。
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ミルラなどの芳香成分で口臭対策も行っていたと考えられます。
🏛 古代ギリシャ・ローマ(紀元前500年頃〜)
主な成分
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砕いた骨や貝殻
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木炭
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粉末状のハーブ
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重曹のようなアルカリ性の成分
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尿(アンモニア):古代ローマでは、漂白作用を期待して使用されていた記録があります(現代では考えられませんが…)
特徴
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ローマ人は口臭と見た目(白い歯)を重視。
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貴族階級では定期的な口腔ケアが行われ、歯磨き粉も高価なものが使われました。
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古代ローマの医師クラウディウス・ガレノスは、自作の歯磨き粉の処方を残しています。
🕌 古代インド(アーユルヴェーダ)
伝統医学の一環として
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インドではアーユルヴェーダ医学の中で、**口腔ケア(ダンタ・スッダ)**が非常に重視されました。
主な成分
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ニームの樹皮の粉末
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塩
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ターメリック(ウコン)
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胡椒、クローブなどの香辛料
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木の枝(デンタルスティック)
特徴
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単なる清掃だけでなく、身体の調和と健康を整える目的もありました。
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今日でも、アーユルヴェーダ由来の歯磨き粉が世界中で販売されています。
🏯 古代中国(紀元前3000年頃〜)
伝統的薬学(中医学)の一部
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歯と口の健康は「気」と「内臓のバランス」に関連すると考えられました。
主な成分
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竹炭
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塩
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高麗人参、リコリスなどの漢方薬
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お茶の葉の粉末(抗菌作用)
特徴
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竹炭は消臭・研磨・吸着作用を兼ね備えており、現在でも使用されます。
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歯磨き以外に「うがい薬」「舌清掃」も行われていた。
🌍 その他の地域
アフリカ
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ミスワーク(Miswak):アラビア語圏や北アフリカで使われていた天然の歯ブラシ。セージやアラカ(Salvadora persica)などの枝を使用。
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現在もイスラム圏では使用されており、世界保健機関(WHO)もその効果を認めています。
メソアメリカ(マヤ・アステカ文明)
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火山灰、灰、ハーブを利用。
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香料を加えて香りにも配慮していた。
🏰 中世ヨーロッパの歯磨き文化(5~15世紀)
背景
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古代ローマの文明崩壊後、衛生意識は全体的に低下。
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医学や口腔衛生は教会や修道院の中で細々と保たれていた。
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人々の口臭・虫歯・歯の抜け落ちは非常に一般的で、歯磨きの習慣は限定的だった。
使用された素材
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上流階級や知識人の間では以下のものが使われていました:
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塩(研磨・殺菌)
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セージやミントなどの乾燥ハーブ(消臭・口臭対策)
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炭(木炭):研磨剤として
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酢:口をすすぐ液体として使用
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歯磨き粉の形態
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粉末状が一般的。
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歯に指で塗る、または布に付けてこすって磨く方法が取られていました。
当時の歯科事情
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虫歯治療は原始的で、歯を抜くことが中心。
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歯医者というよりも「理髪外科医(barber surgeon)」が抜歯を行っていました。
🕌 イスラム世界の中世歯磨き文化(7~13世紀)
医学と衛生の発展
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イスラム文明では中世期でも高度な医学と衛生観念が発展していました。
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クルアーンやハディース(預言者ムハンマドの言行録)にも口腔衛生の重要性が強調されており、歯磨きやうがいが奨励されていました。
使用された素材
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ミスワーク(Miswak):
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アラカ(Salvadora persica)という木の枝を使った天然の歯ブラシ。
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現在でも使われる自然素材で、抗菌作用・研磨力・香りを兼ね備えています。
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木炭、塩、ミント、クローブ、シナモンなどのハーブやスパイス。
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医学者**イブン・シーナー(アヴィセンナ)**の『医学典範』にも、口腔ケアに関する処方が登場します。
特徴
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清潔さと宗教的な習慣(礼拝前の清め)から、日常的な歯磨きの文化が根付いていました。
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ハーブを混ぜた粉末歯磨きや、液体のうがい薬も利用されていた。
🏯 中世アジア(インド・中国・日本)
中国
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中医学の伝統の中で、歯の健康は「気」や「五臓六腑」と関係があるとされ、漢方の中に口腔ケアが含まれていました。
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使用された素材:
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竹炭、塩、緑茶の粉末、高麗人参、甘草(リコリス)
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歯ブラシに似たもの(獣毛を束ねた道具)も使われていたという記録があります。
インド(アーユルヴェーダ)
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アーユルヴェーダでは中世も変わらずニームの枝やハーブ粉末を使った歯磨きが実施されていました。
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ターメリックや塩、クローブ、ペッパーなども利用されました。
日本
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中世の日本では、仏教僧侶など一部の階層で口腔衛生の概念がありました。
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一般的には**塩や灰、木の枝(歯木・歯朶)**を使って歯をこすっていたとされます。
■ 2. 近代歯磨き粉の誕生(19世紀中頃~後半)
● 粉末タイプの登場
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1824年(アメリカ):歯科医「ペズリー(Dr. Peabody)」が、初めて石鹸を加えた粉歯磨きを開発。
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市販用歯磨き粉が登場し始め、薬局や百貨店で売られるようになる。
● チューブ入りの登場
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1873年:コルゲート社(Colgate)が初の量産型歯磨き粉を製造。最初は粉末だったが、その後ペースト状へ。
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1892年頃:歯磨き粉がスズ製チューブに詰められるようになる(元々は絵の具用チューブがヒント)。
■ 3. 20世紀:科学とマーケティングの時代
● フッ素の登場(1940年代〜)
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1945年:アメリカでフッ素入り歯磨き粉の研究が始まる。虫歯予防効果が科学的に立証される。
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1955年:プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)が「クレスト(Crest)」を発売。初の商業的なフッ素入り歯磨き粉として成功。
● 殺菌・美白などの機能性の追加
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1960年代〜:口臭対策、歯周病予防、美白など多機能型が登場。
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トリクロサンなどの抗菌成分、重曹やシリカなどの研磨剤も加えられる。
● 電子メディアと広告
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テレビCMや新聞広告で、歯磨き粉が「健康と清潔の象徴」として売り出されるようになる。
■ 4. 21世紀:ナチュラル志向とテクノロジーの融合
● オーガニック・自然派
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合成添加物(SLS、防腐剤、人工香料)を使わない製品が人気。
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クレイ(粘土)、活性炭、ハーブ配合なども登場。
● サステナビリティ
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再生可能素材のチューブやリサイクル可能な包装が増加。
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「プラスチックフリー」「ビーガン認証」などの製品が登場。
● テクノロジーとの統合
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スマート歯ブラシと連携するデータ管理型歯磨き習慣の導入。
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AIやIoTと連動したオーラルケア製品の開発。
■ 日本における歯磨き粉の歴史(補足)
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明治時代(1880年代):日本でも粉歯磨きが一般化。
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1906年:「ライオン歯磨」がチューブ入り歯磨きを販売。
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戦後には「クリアクリーン」「アパガード」「シュミテクト」など機能性製品が登場。
どうでしょうか?歯磨き粉の歴史もなかなかにすごいですね。当院でも様々な歯磨き粉を取り扱っております。気になる方はスタッフに聞いてみて下さいね!