こんにちわ、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分、いわむら歯科の岩村です。
今回は「ホワイトスポット」についてです。あまり聞きなじみがない単語かもしれませんが、歯科関係者を皆しっている言葉です。簡単に説明すると歯の一部が白く不透明になった状態(白斑)のことです。原因および治療法について簡単に説明していきます。
(ホワイトスポットの原因)
①う蝕
う蝕によるホワイトスポットは、歯の表面から一層内面が脱灰させることで起こるとされています。なぜ、このようになるのかというとプラーク内のpHが臨界pHを下回ることで、基本的には歯の主成分であるハイドロキシアパタイトが分解され、脱灰されます。その際に歯の表面がフッ素を取り込んだフルオロアパタイトがあると、歯の形が維持されたまま内面だけ脱灰されるそうです。
う蝕好発部位に発生するので、前歯唇側面の場合には、歯茎と歯の境目のラインに沿って発生します。永久歯の萌出中に発生した場合
は、完全萌出後に咬合面近くに発生していることもあります。う蝕による場合は多数歯に発生する事が多いです。
また、マルチブラケット装置による矯正歯科治療によってブラケット周囲に発生する、いわゆるブラケットカリエスで発生することもあります。
②先行乳歯の外傷
小さい時に乳歯に外傷をうけると、乳歯の根尖が、後続永久歯の歯胚に影響を与えてしまい、永久歯に形成不全が生じてしまいます。外傷の程度によってホワイトスポットの大きさがかわります。
基本的には外傷をうけた乳歯の後続永久歯にのみ、1つのまとまったホワイトスポットを認めます。重度だと石灰化不全となりエナメル質に着色を伴うこともあります。明らかな乳歯の外傷を経験していて歯科医院への受診をしていれば、永久歯にホワイトスポットが発生するリスクを保護者や家族が理解していますが、大体の場合は無自覚で乳歯の外傷を起こしており、その後軽度のホワイトスポットが永久歯に認められる場合が多いです。
乳歯の根尖と後続永久歯の位置関係によりますが、基本的には歯の先端よりに発生する事が多いです。上の前歯に好発し、1歯単位で発生する事が多いですが、数歯にわたる場合もたびたびあります。また、下の前歯にも外傷によってホワイトスポットが出来るケースもあります。奥歯に関しては外傷が起こることは稀なので、奥歯の場合は外傷以外の原因を考えた方がよさそうです。
③MIH(molar incisor hypomineralization)
永久前歯に影響する事がある(全身的な影響による)1歯以上の6歳臼歯の質的なエナメル質の形成不全のことを指します。原因については6歳臼歯と前歯のエナメル質を形成している期間である4歳までの間に何らかの全身的影響によるものとされていますが、詳しい理由については不明とされています。
MIHのホワイトスポットは境界明瞭な白斑で、着色を伴うことも多いです。石灰化不全なので永久歯の萌出時から穴が開いてはいないですが、エナメル質が脆弱なので、萌出後に穴が開いてしまうことがあります。
6歳臼歯に
・う蝕好発部位でない場所にホワイトスポット、ブラウンスポット、歯質の崩壊、知覚過敏症状がある
・かみ合わせの面の一部に異常な充填物がある
・う蝕リスクが低く、歯周病でもないのに、若くして抜歯されている
などがあればMIHの可能性があります。
上の前歯によく認められますが、1歯から広範囲にかけて認められ、ホワイトスポットの大きさも様々です。
④歯のフッ素症
歯の発生段階にフッ化物を摂取することによってホワイトスポットが生じることがあります。罹患歯は斑状歯と呼ばれます。永久歯の石灰化時期までの摂取が影響するといわれており、基本的には4~8歳ごろまでのフッ化物の摂取が影響すると考えられています。乳歯には発生する事はありません。
飲料水中に1ppm以上添加されたフッ化物により発生しやすくなるとの報告はありますが、自然の水や食品にも含まれているので、詳細は不明です。
全体的に広範囲の歯面に、左右対称に境界不明瞭でまだらなホワイトスポットが発生します。重度になると歯が欠けてしまうこともあります。
(ホワイトスポットの治療法)
基本的に低侵襲な治療法から実施していきます。
①フッ化物応用
フッ化物応用は、再石灰化を期待して実施します。最も低侵襲な治療法ですが、この方法で改善できるホワイトスポットは、基本的に白斑病変のうちの若年者の活動性病変のみです。また、ブラケットカリエスにおいては、う蝕が重度になる傾向があるので、効果に限界があります。
②ホワイトニング
ホワイトニングは、フッ化物応用に次いで低侵襲であり、ごく軽度のホワイトスポットであれば目立たなくすることが可能です。軽度の歯のフッ素症などの境界不明瞭なわずかなホワイトスポットのみが対象となります。
しかし、ホワイトニング術直後は乾燥によってホワイトスポットが強調されたり、イエロースポット、ブラウンスポットにおいては、マスクされていたホワイトスポットが目立ってくることがありますので、術前にリスク説明の必要があります。
③マイクロアブレージョン
マイクロアブレージョンとは、塩酸とラバーカップを用いて化学、機械的にホワイトスポットを除去する方法です。ホワイトスポット表面の0.1mm未満のエナメル質を除去することで、光学特性を変化させて審美性を改善します。主にブラケットカリエスや歯のフッ素症に用いられます。
④低粘性レジン浸潤法
低粘性レジン浸潤法は、塩酸によって表層エナメル質を脱灰させ、エタノールで洗浄と脱水を行ったのち、レジンを浸潤させる方法です。もともとは白斑病変の進行を停止させることを目的として開発された手技ですが、近年では非脱灰性の白斑に対しても有効であることが報告され、適応範囲が拡大しています。
⑤コンポジットレジン充填
白斑を一層削合して、コンポジットレジン充填をするのは、従来から行われている方法で、審美性改善を確実に得ることができます。
ただし、削合することで二次カリエスのリスクが出てくるので、この方法は最終手段といえます。
しかし、ホワイトスポットの治療だけではなく、歯冠形態の改善が必要な時は最初からコンポジット充填を実施する場合もあります。コンポジットレジン充填で対応できない場合はラミネートべニア修復や歯冠補綴処置を実施します(当院ではラミネートべニア修復を実施しておりません)。
なお、この記事を書くにあたり、the Quintessence2025年2月号の特集2「ホワイトスポットの基礎と臨床」を参照させて頂きました。