こんにちは、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分のいわむら歯科院長の岩村です。
今回は「オーラルフレイル(oral frailty)」について説明していこうかと思います。
(オーラルフレイルとは)
オーラルフレイルは、「口の機能のささいな衰え」から始まり、放置すると全身のフレイル(虚弱)や介護リスクに発展するという考え方です。
「フレイル(frailty)」=「健康と要介護の中間状態」
主な症状や兆候
項目 | 内容 |
---|---|
噛む力の低下 | 硬いものが食べづらくなる |
飲み込む力の低下(嚥下障害) | むせやすくなる、水やお茶で咳き込む |
口の乾燥 | 唾液の分泌量が減る |
会話の減少 | 滑舌が悪くなる、話しづらくなる |
歯の本数が減る | 義歯やブリッジでも補えない場合も |
🧠 なぜ重要?
口の機能が衰えると、以下のような影響が出ることがあります:
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栄養不良(噛めない→食べない→栄養不足)
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社会的孤立(話しづらい→会話が減る)
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認知症リスクの増加
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誤嚥性肺炎のリスク増加
つまり、オーラルフレイルは全身の健康と深くつながっているんです。
🧓 高齢者だけの問題?
実は40~50代でも、生活習慣によってはオーラルフレイルが始まっていることがあります。早めに意識することで、将来的な介護リスクを下げることができます。
✅ オーラルフレイルチェックリスト(簡易版)
「オーラルフレイルチェックリスト」は、自分や家族の口の健康状態を簡単に自己チェックできるツールです。主に高齢者向けに作られていますが、40代以上なら誰でも活用できます。
以下の7つの質問に「はい」か「いいえ」で答えてください。
質問項目 | はい / いいえ |
---|---|
① 硬いものが食べにくくなった | |
② 食事中にむせることがある | |
③ 口が乾燥しやすい | |
④ 半年前と比べて食事の量が減った | |
⑤ 外出の頻度が減った | |
⑥ 最近滑舌が悪くなったと感じる | |
⑦ お茶や汁物でむせることがある |
🔍 判定の目安
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「はい」が0~1個:問題なし、現状を維持しましょう!
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「はい」が2~3個:注意が必要、オーラルフレイルの兆候あり
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「はい」が4個以上:オーラルフレイルの可能性が高い → 歯科医や医師に相談を!
※このチェックリストは、東京都健康長寿医療センター研究所などの研究に基づいています。
(オーラルフレイル評価)
「オーラルフレイル評価」は、口の機能がどの程度衰えているかを客観的に評価する方法です。これは医療・介護・歯科の現場で用いられる正式な評価法で、見逃されやすい口腔機能の低下を早期に発見することが目的です。
🩺 オーラルフレイル評価の主な構成
「オーラルフレイル評価」は、大きく以下の 3ステップ に分けられます。
✅ ステップ1:主観的質問(スクリーニング)
以下のような自己申告による質問を通して、自覚症状の有無を把握します。
質問 | 内容 |
---|---|
噛みにくい食べ物がありますか? | 例:たくあん、せんべいなど |
食事中によくむせますか? | お茶や汁物でむせることなど |
口が乾きやすいと感じますか? | 唾液量の減少や口のねばつき感 |
滑舌が悪くなったと感じますか? | 会話がしづらくなった、聞き返されることが増えた等 |
✅ ステップ2:客観的な機能テスト(7つの口腔機能の評価)
これは歯科医院などで専門的に実施される評価です。
項目 | 評価内容 | 評価方法の例 |
---|---|---|
1. 口腔衛生 | 口腔内の清潔さ | 舌苔の付着量など |
2. 口腔乾燥 | 唾液の分泌状態 | 唾液分泌量測定器など |
3. 咬合力(噛む力) | 噛みしめる力 | 圧力センサー付きフィルムなど |
4. 舌口唇運動機能 | 舌・唇の動きの滑らかさ | 「パ・タ・カ」テスト(発音回数を1秒で数える) |
5. 咀嚼機能 | 噛み砕く能力 | グミ・ガムを使った色変化テスト |
6. 嚥下機能(飲み込み) | 飲み込みの安全性 | 水飲みテストや頸部触診 |
7. 舌圧(舌の力) | 舌の押す力 | 舌圧測定器を使用(40kPa以上が正常) |
✅ ステップ3:総合判定
各項目の評価結果をもとに、
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正常(非フレイル)
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プレ・オーラルフレイル
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オーラルフレイル(要介入)
という形で判定され、必要に応じて治療や訓練、生活習慣の改善が行われます。
(オーラルフレイルの予防・改善方法)
🔄 オーラルフレイルの予防・改善の基本方針
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口の機能を鍛える(動かす・使う)
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口の中を清潔に保つ
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よく噛み、よく食べ、よく話す
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歯科の専門家と連携する
🏋️♀️ 具体的なトレーニング・ケア方法
✅ 1. 「パ・タ・カ・ラ体操」(滑舌・嚥下・咀嚼力UP)
口の動きや舌の運動機能を高める有名な体操です。
音 | 鍛えられる機能 |
---|---|
パ | 唇の動き(口をしっかり閉じる力) |
タ | 舌の先の動き(発音・飲み込み) |
カ | 舌の奥の動き(嚥下機能) |
ラ | 舌全体の柔軟性(発声・会話) |
🕐 やり方:
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「パパパパ…」「タタタタ…」など1音ずつ5~10回繰り返す
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慣れてきたら「パ・タ・カ・ラ」を1セットで10回程度
✅ 2. 舌回し体操(舌の柔軟性・唾液分泌UP)
🕐 やり方:
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口を閉じて、舌で歯ぐきの外側をなぞるようにぐるぐる回す(右回り→左回り)
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各方向10回ずつ
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舌が疲れるくらいがちょうどいい!
✅ 3. 唾液腺マッサージ(口の乾燥・唾液不足対策)
唾液は消化を助けるだけでなく、口の自浄作用・感染予防にも重要です。
🕐 やり方:
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耳下腺:耳たぶの下を前向きに優しく押す
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顎下腺:あごの下の柔らかい部分を指で軽く揉む
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舌下腺:あごの先、舌の裏側に向けて軽く押す
1日2~3回、1回3分程度が目安。
✅ 4. よく噛んで食べる(咀嚼力・唾液分泌・満腹感)
🦷 ポイント:
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「1口30回噛む」を目安に
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左右両側で噛む
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柔らかすぎる食事ばかりにしない(多少の歯ごたえを残す)
✅ 5. 発声・会話の習慣化(社会参加・口の運動)
声を出すことも立派な口の運動です!
💬 やり方:
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毎日短い読書(声に出して)や歌を歌う
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家族や友人と積極的に会話する
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「今日の出来事」を話す・メモして読むなども◎
✅ 6. 口腔ケア(歯・舌・入れ歯の清掃)
🪥 ポイント:
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歯磨きは1日2回以上
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舌苔(舌の白い汚れ)も専用ブラシで清掃
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義歯は外して清掃&保管もきちんと
🦷 歯科医院との連携も大切!
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定期検診(3~6ヶ月ごと)
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口腔機能のスクリーニング
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必要に応じてリハビリ(摂食嚥下訓練など)
特に、滑舌が悪くなった・むせやすくなった・食欲が減った…という人は早めに相談しましょう。