今回は「歯の着色」について説明していきます。
歯の着色(歯の変色)にはいくつかの原因があり、それに応じた対策を講じることができます。主に以下のような原因があります。
(歯の着色の外的要因)
1. 食べ物や飲み物の色素
いくつかの食べ物や飲み物は、その色素が歯の表面に付着することで、歯の色を変える原因となります。
・コーヒーや紅茶、緑茶
これらの飲み物に含まれる「ポリフェノール」や「タンニン」という成分が、歯のエナメル質に付着して着色を引き起こします。特に、コーヒーや紅茶は色が濃く、長期間の摂取で歯が茶色く変色することがあります。
・赤ワイン
赤ワインには「アントシアニン」という成分が含まれており、これは強い着色作用があります。ポリフェノールとともに、歯の表面に色素が沈着し、歯を赤や紫がかった色に変えることがあります。
・カレーやスパイス料理
カレーに含まれる「ターメリック」は強い黄色の色素を持っており、これが歯に付着することで歯が黄色くなることがあります。また、スパイス料理に含まれるクミンやその他の香辛料も色素を含んでいるため、歯に影響を与えることがあります。
・ベリー類(ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリーなど)
ベリー類は色素が非常に強いため、摂取後に歯に付着しやすいです。これらの果物に含まれる「アントシアニン」などの色素が歯に付着し、紫や赤みがかった着色を引き起こします。
・トマトやトマトソース
トマトに含まれるリコピンは強い赤色の色素で、歯に付着しやすく、長期的に摂取すると歯が赤みを帯びた色になることがあります。
2. 喫煙
タバコの煙には「タール」や「ニコチン」が含まれており、これが歯に付着して着色を引き起こします。タールは黄色や茶色の色素を含んでおり、喫煙を続けることで歯が黄ばんだり、茶色くなったりします。喫煙者の歯は、非喫煙者に比べて着色が顕著になることが多いです。
3. 酸性飲料
酸性の飲み物(例えば、炭酸飲料やスポーツドリンクなど)は、歯のエナメル質を弱めることがあります。エナメル質が弱くなると、色素が付着しやすくなり、歯が着色しやすくなる場合があります。また、これらの飲み物は歯にダメージを与えることもあるため、注意が必要です。
4. 加工食品や着色料を含む飲食物
加工食品や甘いお菓子、着色料を多く含む飲料(例えば、色鮮やかなキャンディやジュースなど)も、歯の着色を引き起こすことがあります。これらの食品や飲料に含まれる人工着色料や糖分は、歯に色素が付着しやすい環境を作り出すため、歯の着色を促進する原因となります。
5. お酢や酸味の強い食品
お酢やレモンなどの酸味の強い食品も、エナメル質を傷つける原因となり、結果的に着色を引き起こしやすくします。酸性の食品がエナメル質を弱めると、色素が付着しやすくなるためです。
(歯の着色の内的要因)
1. 加齢
加齢に伴って歯の色が変わることは自然な現象です。加齢による歯の変色の主な原因は以下の通りです。
- エナメル質の摩耗:歯の表面を覆っているエナメル質は、時間の経過とともに摩耗します。エナメル質が薄くなると、下にある象牙質が透けて見えるようになり、象牙質は元々黄色みを帯びているため、歯全体が黄色っぽく見えることがあります。
- 象牙質の色素変化:加齢により象牙質自体の色が変化することもあります。象牙質が年齢とともに濃くなることがあり、その結果歯が黄ばみやすくなります。
2. 薬剤による影響
一部の薬剤が歯の内的着色を引き起こすことがあります。特に以下の薬剤が影響を与えることがあります。
- テトラサイクリン系抗生物質:テトラサイクリン系の抗生物質を摂取したことがある場合、特に歯が発育している時期(子供の時期など)に歯に着色が現れることがあります。テトラサイクリンは歯のエナメル質に着色を引き起こし、特に灰色や茶色の着色をもたらすことがあります。
- 抗ヒスタミン薬や抗精神病薬:一部の抗ヒスタミン薬や抗精神病薬も歯に着色を引き起こすことがあります。これらの薬剤が歯に影響を与えるメカニズムは完全には解明されていませんが、歯が灰色や茶色になることがあります。
3. フッ素過剰摂取(フッ素症)
フッ素は虫歯予防に効果的ですが、過剰に摂取すると歯に影響を及ぼすことがあります。フッ素が過剰に含まれた水を飲み続けたり、フッ素が豊富な製品を多く使用すると、歯に白斑が現れたり、歯の色が黄色くなることがあります。これを「歯のフッ素症」といいます。
- 白斑:フッ素症によって歯に白い斑点が現れることがあります。この斑点はエナメル質の異常により生じ、歯全体が黄色く見える原因となることもあります。
4. 歯の外傷や損傷
歯が外的な衝撃を受けたり、損傷したりすると、内部で出血や組織の変化が起こり、歯が変色することがあります。
- 歯髄の出血:歯が外的な衝撃を受けると、歯髄内で出血が起きることがあります。これにより、歯が暗い色、特に灰色や黒に変色することがあります。
- 内部損傷:歯の中の神経や血管が損傷を受けると、内部の色素が漏れ出し、歯が変色することもあります。
5. 口腔内の疾患や感染
歯の内側に感染や炎症が生じると、歯の色が変わることがあります。
- 歯髄炎:歯髄が炎症を起こすと、歯が黒く変色することがあります。歯髄内で血液が漏れ出し、歯の色が変わる原因となります。
- 歯の神経の死:歯の神経が死んでしまうと、歯が黄色や灰色に変色することがあります。神経が死ぬ原因には、虫歯や外傷が関係していることが多いです。
6. 遺伝的要因
遺伝的な要因によって、歯の色が生まれつき変わっている場合もあります。エナメル質が薄い、または象牙質が色濃いという遺伝的な特徴を持つ人もおり、そのため歯が通常よりも黄色っぽく見えることがあります。
7. 歯の発育時期の影響(幼少期)
歯が発育する過程で、母体や幼少期に何らかの影響を受けると、歯が変色することがあります。
- 妊娠中の影響:母親が妊娠中に薬を服用したり、栄養不足や感染症にかかったりすると、胎児の歯の発育に影響を与えることがあります。これにより、子供が生まれた後に歯の色が変わることがあります。
- 乳歯や永久歯の発育時期の影響:乳歯や永久歯が発育している最中に、感染症や栄養不良、薬物の影響を受けると、歯に内的な変色が現れることがあります。
(歯の着色への対策について)
1. 歯のクリーニング(プロフェッショナルケア)
歯科医院で定期的にプロフェッショナルクリーニングを受けることが、歯の着色予防には非常に効果的です。
- スケーリング(歯石除去):歯に付着した歯石やプラーク(歯垢)を除去することで、歯の表面に付いた色素が取り除かれます。これにより、タバコのヤニやコーヒー、紅茶の色素が除去され、歯が白くなります。
- ポリッシング(歯面研磨):歯の表面を滑らかにし、色素の付着を防ぐことができます。特に軽度の着色には効果的です。
2. ホワイトニング
歯の着色を改善する方法の中で最も一般的なものがホワイトニングです。ホワイトニングにはいくつかの種類があります。
・オフィスホワイトニング(歯科医院で行う)
歯科医院で行うホワイトニングは、専用の薬剤を使って短時間で歯を白くする方法です。エナメル質に染み込んだ色素を取り除くことができ、特に外的な着色(コーヒーや紅茶、タバコによる着色)に効果があります。
・ホームホワイトニング(自宅で行う)
歯科医院でカスタムメイドのマウスピースを作り、その中にホワイトニングジェルを入れて自宅で行う方法です。オフィスホワイトニングよりも時間がかかりますが、効果は持続的であり、外的な着色に対して非常に効果的です。
・市販のホワイトニング製品
ホワイトニング歯磨き粉やホワイトニングシートなど、市販で手に入る製品を使う方法もあります。ただし、効果は歯科医院で行うホワイトニングに比べて軽度で、内的な着色にはあまり効果がないことが多いです。
3. 歯磨きの改善
日常的な歯磨きによって着色を予防することができます。特に以下の点に注意して歯磨きすると効果的です。
・色素がつきやすい食べ物や飲み物後にすぐに歯を磨く
コーヒー、紅茶、ワイン、カレー、ベリー類など色素が強い食べ物や飲み物を摂取した後は、すぐに歯を磨くことが大切です。これによって、歯に色素が付着するのを防ぐことができます。
・ホワイトニング効果のある歯磨き粉の使用
ホワイトニング効果のある歯磨き粉は、表面の着色を軽減し、歯を明るく保つのに役立ちます。特に軽度の外的な着色には効果がありますが、内的な着色に対しては効果は限定的です。
・歯磨きのタイミングを工夫する
食後すぐに歯磨きをすることは重要ですが、酸性の飲み物(例えばジュースやソーダなど)を摂取した直後は、歯のエナメル質が柔らかくなっているため、すぐに歯磨きは避け、少し時間をおいてから磨くと良いでしょう。
4. 食後の口をすすぐ
食べ物や飲み物による歯の着色を防ぐためには、食後に口をすすぐことが効果的です。色素が歯に付着する前に、口内を水ですすぐことで、着色を防ぐことができます。
5. ストローの使用
特にコーヒーや紅茶、ジュース、ソーダなどの飲み物を飲むときにストローを使うことで、飲み物が歯に直接触れるのを防ぐことができます。これにより、歯の着色を予防することができます。
6. 喫煙の回避
タバコは歯を黄色く、または茶色く変色させる主な原因です。喫煙をやめることが、歯の着色予防に最も効果的な方法の一つです。禁煙することで、歯の健康を守り、着色を防ぐことができます。
7. ダイエットの見直し
色素が強い食べ物や飲み物(コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、ベリー類など)の摂取を減らすことで、歯の着色を予防することができます。食事の中で色素が多い食品を控えるか、摂取後に口をすすぐことを習慣にすると良いでしょう。
8. ラミネートべニアやクラウンによる対策
もし着色が深刻で、ホワイトニングでは改善できない場合、歯科医師と相談の上、ラミネートべニア(薄いセラミックのシェルを歯の表面に貼り付ける)やクラウン(被せ物)などの歯科治療を検討することもできます。これにより、歯の外見を大幅に改善できます。
9. 歯のフッ素処置
フッ素は歯を強化し、エナメル質を再石灰化させる働きがあります。フッ素処置を受けることで、歯の耐久性を高め、着色を防ぐことができます。特にフッ素の過剰摂取による着色が心配な場合は、フッ素濃度の調整が必要です。