こんにちは、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分のいわむら歯科院長の岩村です。
今回は「睡眠時無呼吸症候群」の中でも代表的な「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」について説明していきます。
一見歯科医師が関係なさそうな分野ですが、そういう訳でもございません。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、気道が部分的または完全に塞がることによって呼吸が一時的に停止する状態を指します。これにより酸素の供給が一時的に不足し、睡眠の質が低下し、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群のメカニズム
- 喉の筋肉が弛緩: 睡眠中、喉の筋肉(特に舌や軟口蓋の筋肉)が弛緩するため、気道が狭くなり、呼吸がしにくくなります。
- 気道の閉塞: 気道が完全に閉塞すると、呼吸が止まることがあります(無呼吸)。呼吸が浅くなることもあります(低呼吸)。このような状態が繰り返されると、血中の酸素濃度が低下します。
- 覚醒反応: 呼吸が止まると、脳が一時的に覚醒し、気道を開けようとします。このため、無呼吸や低呼吸が終わると再び呼吸が始まります。この覚醒反応が繰り返されることで、深い眠りが妨げられます。
2. 症状
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状は、主に以下のようなものがあります:
- いびき: 喉の筋肉が弛緩して気道が狭くなることで、いびきが発生します。特に深い睡眠に入る前にいびきが大きくなることが特徴です。
- 呼吸停止: 家族やパートナーが睡眠中に呼吸が止まることを観察することが多いです。この一時的な呼吸停止が繰り返されます。
- 昼間の過度の眠気: 睡眠が浅くなり、質が低下するため、昼間に強い眠気を感じることがあります。
- 集中力の低下や記憶障害: 睡眠の質が低下することで、仕事や学業、日常生活において集中力が低下したり、記憶力に問題が出たりすることがあります。
- 朝の頭痛や喉の乾燥: 酸素不足が原因で、朝に頭痛や喉の乾燥を感じることがあります。
3. リスク因子
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、以下のような要因が関与することが多いです:
- 肥満: 体重が増えると、喉の周りに脂肪が蓄積され、気道が圧迫されやすくなります。肥満はOSAの最大のリスク因子とされています。
- 年齢: 年齢を重ねると喉の筋肉が弛緩しやすく、睡眠中の気道の閉塞が起こりやすくなります。特に40歳以上の男性に多く見られます。
- 性別: 男性は女性よりも閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい傾向にありますが、閉経後の女性でも発症リスクが増加します。
- 喫煙: 喫煙は喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭めるため、睡眠時無呼吸を悪化させる原因となります。
- 飲酒: 睡眠前にアルコールを摂取すると、喉の筋肉がさらに弛緩し、気道が塞がりやすくなります。
- 遺伝: 家族に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人がいると、自分も発症しやすくなることがあります。
4. 診断
診断は、医師の問診や検査によって行います。代表的な診断方法は以下の通りです:
- 睡眠ポリグラフ検査(PSG): 病院で行われる最も正確な検査で、睡眠中の脳波、心拍、呼吸、筋電図などを同時に記録し、無呼吸の回数や程度を評価します。
- 家庭での簡易検査: 自宅で行える簡易検査(ポータブル睡眠検査装置)を使用して、無呼吸の回数や酸素濃度の低下を測定することもあります。
5. 治療方法
①生活習慣の改善
軽度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合、生活習慣を改善することで症状が改善されることがあります。主な改善方法は以下の通りです。
体重管理
- 肥満はOSAの最も重要なリスク因子の一つです。過剰な体重が気道に圧力をかけ、気道が閉塞しやすくなるため、体重を減らすことが症状を軽減させる場合があります。適切なダイエットや運動を取り入れることが推奨されます。
禁煙
- 喫煙は気道に炎症を引き起こし、喉の筋肉を弛緩させて無呼吸を悪化させます。禁煙することで、症状が改善することがあります。
アルコール摂取の制限
- アルコールは喉の筋肉を弛緩させ、気道の閉塞を悪化させるため、就寝前のアルコール摂取を避けることが重要です。
睡眠姿勢の改善
- 仰向けで寝ると舌や軟口蓋が喉の奥に落ちて気道を塞ぎやすくなります。横向きで寝ることで、症状が軽減されることがあります。場合によっては、寝具や特別な枕を使うことも推奨されます。
規則正しい睡眠
- 毎晩同じ時間に寝ることや、十分な睡眠を確保することが、睡眠時無呼吸症候群の症状を和らげる手助けになります。
②医療機器による治療
CPAP(持続陽圧呼吸療法)
- CPAPは最も一般的かつ効果的な治療法です。睡眠中に顔に装着するマスクから持続的に空気を送り、気道を開けて呼吸を確保します。この方法は、無呼吸や低呼吸の回数を大幅に減少させ、深い睡眠を促進します。
- 利点: 睡眠時の呼吸が安定し、日中の眠気が軽減され、健康リスクが減少します。
- デメリット: 一部の患者はマスクが不快に感じることがあり、使い続けることが難しい場合もあります。ただし、最新のデザインや装着方法により、快適さが向上しています。
BiPAP(双方向陽圧呼吸療法)
- BiPAPは、CPAPの改良版で、吸気と呼気に異なる圧力をかけることで、より快適に呼吸をサポートします。これにより、CPAPがうまく機能しない場合や、呼吸が非常に浅い場合に使用されます。
- 利点: より柔軟に呼吸をサポートできるため、特に重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群や呼吸機能が低下している患者に有効です。
口腔内装置(マウスピース)
- 軽度から中等度のOSAに対して、**口腔内装置(マウスピース)**が有効です。これらは上顎や下顎を前方に押し出すことで、気道を広げ、呼吸を改善します。主に歯科医が処方し、患者に合ったものを作成します。
- 利点: 非侵襲的で、使い勝手が良いため、CPAPが不快な場合や軽度の症状の患者に適しています。
- デメリット: 重度のOSAには効果が薄いため、重症患者には適用されません。
- 歯科医院でマウスピースを作製する際には、医科での診断書が必要となります!
③外科的治療
外科的治療は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が非常に重度で他の治療法が効果を示さない場合に考慮されます。代表的な外科的治療方法は以下の通りです。
軟口蓋や扁桃腺の手術
- 軟口蓋の切除や扁桃腺の摘出などを行うことで、気道の広さを改善することがあります。特に、扁桃腺が大きくて気道を圧迫している場合に有効です。
顎の手術(下顎前突手術)
- 顎の位置が問題となっている場合、顎の手術(下顎前突手術)を行うことがあります。この手術では、顎を前方に移動させて気道を広げることを目的としています。
鼻の手術
- 鼻づまりや構造的な問題が原因である場合、鼻の手術が行われることもあります。鼻中隔湾曲症や慢性副鼻腔炎などの治療が必要です。
舌の手術
- 重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合、舌の位置を調整するための手術(舌根部切除術)を行うことがあります。舌の根元部分を取り除いて気道を広げる方法です。
④その他の治療法
- 薬物療法:現時点では、睡眠時無呼吸症候群の治療における薬物療法は一般的ではありませんが、気道の炎症を抑えるために一部の薬が使用されることがあります。例えば、抗アレルギー薬や鼻づまりを解消する薬などです。
- 連続的に気道を開く治療(C-TAP)など、新しい治療法も研究されていますが、これらはまだ一般的に普及していません。
6. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の影響
この病気を放置すると、以下のような健康問題が発生する可能性があります:
- 高血圧:無呼吸が繰り返されることで、血圧が上昇し、高血圧に繋がることがあります。
- 心血管疾患:心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
- 糖尿病:インスリンの効きが悪くなり、糖尿病の発症リスクが増加します。
- 認知症:睡眠不足が長期化すると、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
結論
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が一時的に止まることで深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。もし自分や家族にこの病気の兆候がある場合、医師に相談することをお勧めします