最近は水道水も冷たくなっておりますが、そんな時期に悩む人が多いのが知覚過敏です。
今回は知覚過敏について説明していきます。
知覚過敏(ちかくかびん)は、歯が温度や甘い、酸っぱい食べ物、または冷たい空気などの刺激に対して過度に反応し、痛みを感じる状態を指します。これは、歯の表面にあるエナメル質が摩耗したり、歯茎が退縮して歯の根元が露出することで起こることが多いです。
(知覚過敏の原因)
知覚過敏の原因は、主に歯のエナメル質が摩耗したり、歯茎が退縮して歯の根元が露出することによって引き起こされますが、その他にもさまざまな要因が関与しています。以下で、知覚過敏の主な原因を詳しく解説します。
1. エナメル質の摩耗
エナメル質は歯の最も外側の硬い層で、歯を守る役割を持っています。しかし、エナメル質が摩耗すると、内側にある象牙質(ぞうげしつ)が露出し、刺激に敏感になります。象牙質は冷たいものや熱いもの、甘いものなどに反応して痛みを引き起こすため、知覚過敏の症状が現れます。
エナメル質の摩耗の原因には次のようなものがあります:
- 強すぎる歯磨き:歯磨きの際に力を入れすぎたり、硬い歯ブラシを使うことが原因となります。特に「スクラビング法」(歯ブラシを前後に強くこするような磨き方)は、エナメル質を削る原因になります。
- 酸性の飲食物:酸性の食べ物や飲み物(例:オレンジジュース、ソーダ、ワイン、酢など)は、エナメル質を溶かすことがあります。これにより、歯の表面が薄くなり、象牙質が露出しやすくなります。
- 胃酸の逆流:胃酸が食道を逆流して口腔内に達する(逆流性食道炎やGERD)と、胃酸が歯のエナメル質を溶かし、知覚過敏の原因になります。
2. 歯茎の退縮
歯茎(歯肉)が後退すると、歯の根元が露出します。歯の根元はエナメル質に覆われていないため、象牙質が直接外部の刺激にさらされます。これにより、知覚過敏が発生します。
歯茎が退縮する原因には次のようなものがあります:
- 歯周病(歯肉炎や歯周炎):歯周病は歯茎を炎症させ、歯茎が退縮する原因となります。歯周病が進行すると、歯の根元が露出して痛みを感じることがあります。
- 不適切な歯磨き:力を入れすぎて歯を磨いたり、硬い歯ブラシを使うことで歯茎が傷つき、退縮を引き起こすことがあります。
- 加齢:年齢とともに歯茎が自然に退縮することがあり、これも知覚過敏の一因となります。
3. 歯のひび割れや欠け
歯がひび割れたり、欠けたりすることで、その部分から刺激が内部に伝わりやすくなり、知覚過敏を引き起こすことがあります。歯に小さな亀裂が入っていると、冷たいものや温かいもの、甘いものに対して過敏に反応することがあります。
ひび割れや欠けは、次のような理由で起こることがあります:
- 強い咬み力:食べ物を強く噛んだり、歯ぎしりやくいしばりをすることが原因で歯に亀裂が入ることがあります。
- 外部からの衝撃:スポーツや事故によって歯に衝撃を受けることで、ひび割れや欠けが生じることがあります。
4. 歯科治療後の反応
一部の歯科治療後に知覚過敏が発生することがあります。特に、歯の詰め物をしたり、ホワイトニングを行った後に一時的な知覚過敏が見られることがあります。
これには次のような原因があります:
- 詰め物やクラウンの作成後:詰め物やクラウンを入れることで、歯の表面が一時的に刺激を受けることがあります。また、詰め物が完全にフィットしない場合、歯の周囲の接触部分に圧力がかかり、知覚過敏を引き起こすことがあります。
- ホワイトニング:ホワイトニングは歯の表面の色素を取り除く治療ですが、この過程で歯が一時的に敏感になることがあります。
5. 不適切な歯磨き粉の使用
一部の歯磨き粉に含まれる研磨剤が、歯の表面を摩耗させ、エナメル質を削ることがあります。これにより、象牙質が露出し、知覚過敏が引き起こされることがあります。
また、知覚過敏専用の歯磨き粉を使っていないと、歯の感度が高くなる可能性があるため、知覚過敏を感じる場合は、専用の歯磨き粉に切り替えることが効果的です。
6. クエン酸や酸性の飲食物による歯の侵食
酸性の飲食物(オレンジ、レモン、ソーダ、アルコール、エナメルを傷つける可能性のある食品)を頻繁に摂取すると、歯のエナメル質が徐々に溶けて薄くなります。これにより、象牙質が露出し、知覚過敏が起こりやすくなります。
7. 遺伝的要因
遺伝的な要因も知覚過敏に関与することがあります。たとえば、エナメル質が生まれつき薄い人や、歯茎が早期に退縮する傾向がある人は、知覚過敏のリスクが高くなります。
(知覚過敏の症状)
知覚過敏の症状は、歯が外部の刺激に対して過剰に反応することによって引き起こされる痛みや不快感です。この症状は、一時的であり、特定の刺激に対して発生することが多いです。以下で、知覚過敏の代表的な症状を詳しく解説します。
1. 冷たいものに対する痛み
知覚過敏の最も一般的な症状は、冷たいものを口にしたときに感じる痛みです。冷たい飲み物やアイスクリーム、冷水などを摂取した際に、歯にピリッとした鋭い痛みを感じることがあります。特に、歯の根元部分や歯の先端に痛みを感じやすいです。
- 冷たい飲み物や食品(例:冷蔵庫から出した飲み物、アイスクリームなど)を口にしたとき、痛みが急に感じられ、その後数秒以内に痛みが収まることが特徴です。
2. 熱いものに対する痛み
冷たいものに加えて、熱いものにも敏感になることがあります。温かい飲み物(例:コーヒー、紅茶、スープなど)や温かい食べ物を摂取したときに、歯がしみたり痛むことがあります。これは、知覚過敏の歯が温度差に過剰に反応するためです。
- 熱い飲み物や食べ物(例:温かいスープやお茶など)を口にしたときに、冷たいものと同様に鋭い痛みを感じることがあります。
3. 甘いものに対する痛み
甘い食べ物や飲み物を摂取したときにも痛みを感じることがあります。砂糖が含まれる食品(例:チョコレート、ケーキ、キャンディなど)や甘い飲み物(例:ジュース、ソーダなど)が歯に触れると、痛みやしみる感じが現れることがあります。
- 甘いもの(特に砂糖が多い飲食物)を摂取すると、痛みを感じることがあり、これも知覚過敏の特徴の一つです。
4. 酸っぱいものに対する痛み
酸味が強い食品や飲み物(例:オレンジ、レモン、酸っぱいキャンディ、炭酸飲料など)を摂取すると、歯がしみることがあります。酸は歯のエナメル質を一時的に溶かすことがあり、露出した象牙質が刺激を受けて痛みを引き起こします。
- 酸っぱいものを食べたり飲んだりすると、歯が敏感に反応し、痛みを感じることがあります。
5. 空気に対する痛み
知覚過敏の歯は、温度の変化や刺激に対して非常に敏感です。冷たい空気を吸ったり、風に当たったりするだけで、痛みを感じることがあります。これは、特に歯の根元が露出している場合に見られます。
- 冷たい空気を吸ったり、強風に当たった際に、歯にピリッとした痛みや不快感を感じることがあります。
6. 歯磨き時の痛み
歯を磨くときに、特に歯茎の退縮が進んでいる部分や、エナメル質が摩耗して象牙質が露出している部分に痛みを感じることがあります。歯磨き粉が刺激となり、歯に痛みを引き起こす場合もあります。
- 歯磨きの際、歯に圧力がかかると痛みを感じることがあります。特に、硬い歯ブラシを使用したり、力を入れすぎて磨いたりすることで、知覚過敏の症状が悪化することがあります。
7. 一時的な痛み
知覚過敏の痛みは、通常一時的であり、外的な刺激が取り除かれると痛みがすぐに収まります。痛みの持続時間は数秒から数分程度です。ただし、痛みが頻繁に発生したり、長時間続く場合は、知覚過敏が進行している可能性があります。
- 短時間で収まる痛みが特徴です。痛みは鋭く、突然現れてすぐに収束します。
8. 慢性的な痛み
知覚過敏が進行すると、外部の刺激に対して常に痛みを感じるようになることがあります。この場合、冷たいものや熱いものだけでなく、日常的な食事や歯磨き、会話などでも不快感が生じることがあります。慢性的な知覚過敏は、歯のエナメル質がかなり摩耗している場合や歯茎が大きく退縮している場合に見られます。
9. 痛みの程度に個人差
知覚過敏の痛みの程度は個人差があります。痛みが非常に鋭く感じる人もいれば、軽い不快感として感じる人もいます。痛みの強さや頻度は、原因や進行具合によって異なります。
(知覚過敏の予防法)
❶適切な歯磨き方法を実践
知覚過敏を予防するためには、まず歯磨き方法が重要です。歯を強く磨いたり、硬い歯ブラシを使うことはエナメル質を摩耗させ、知覚過敏を引き起こす原因になります。
・力を入れすぎず、軽いタッチで磨くことが大切です。歯磨きは、円を描くように優しく磨くのが理想です。
・歯磨き粉を適切に選ぶ:研磨剤が少ない歯磨き粉を選ぶことが大切です。特に知覚過敏が気になる場合は、専用の歯磨き粉を使用するとよいでしょう。
❷知覚過敏用の歯磨き粉を使う
知覚過敏を予防するために、知覚過敏専用の歯磨き粉を使うことが効果的です。これらの歯磨き粉は、象牙質の露出部分にフッ素やカリウムなどの成分を働かせ、過敏症状を軽減する作用があります。知覚過敏用の歯磨き粉は、歯の神経を落ち着ける成分を含んでおり、刺激に対する感受性を減少させることができます。
❸酸性の食品や飲み物を控える
酸性の食べ物や飲み物(例:ジュース、ソーダ、フルーツ、アルコールなど)は、エナメル質を溶かす原因となり、知覚過敏を引き起こしやすくします。
・酸性飲料を摂取した後は、口を水で軽くすすぐことで、酸性成分が歯に長時間残るのを防げます。
・酸性飲料を飲むときは、ストローを使うことで直接歯に触れにくくすることも有効です。
❹歯の保護
強い力で食事をしている、歯ぎしりやくいしばりをしている場合、歯に負担がかかり、エナメル質が摩耗して知覚過敏を引き起こすことがあります。
・ナイトガード(歯ぎしり防止用マウスピース)を使うことで、寝ている間の歯ぎしりから歯を保護できます。
・食べ物を噛む際に過剰な力をかけないよう、固いものを避けるなど工夫すると良いです。
❺定期的な歯科検診を受ける
知覚過敏の進行を防ぐために、定期的に歯科で検診を受けることが大切です。歯科医師は、歯の状態をチェックし、早期に問題を発見することができます。また、歯周病や虫歯などの予防や治療も行えます。
❻フッ素で歯を強化
フッ素にはエナメル質を強化する効果があります。歯科医院でフッ素治療を受けることも一つの方法です。また、自宅でフッ素入りの歯磨き粉を使うことでもエナメル質の保護に役立ちます。
(知覚過敏が発生した場合の対処法)
①知覚過敏専用の歯磨き粉を使用
予防だけでなく、知覚過敏が実際に発生してしまった場合にも、知覚過敏専用の歯磨き粉を使うと効果的です。これらの歯磨き粉は、痛みを和らげる成分を含んでおり、歯の感度を抑える助けになります。
②歯科医師に相談
知覚過敏が続く場合や痛みがひどくなる場合、歯科医院での治療を受けることをおすすめします。歯科医師は、原因を調べ、適切な対処法を提案してくれます。
・フッ素塗布:歯科でフッ素を塗布することで、歯のエナメル質を強化し、知覚過敏を軽減することができます。
・樹脂コーティング:歯の根元に樹脂を塗布することで、象牙質を保護し、痛みを和らげることができます。
・レーザー治療:歯の根元に歯科用レーザーを照射することで、痛みを和らげることができます。
③痛みを緩和する薬を使用
知覚過敏の痛みがひどい場合、鎮痛剤(例:イブプロフェンやアセトアミノフェン)を使用して痛みを一時的に軽減することができます。ただし、薬の使用は一時的な対処法であり、根本的な原因を解決するわけではないため、あくまで緊急時の対応として使用することが重要です。
④歯磨きの際の注意
知覚過敏がある歯を磨く際には、柔らかい歯ブラシを使用し、力を入れすぎないようにします。痛みがある部分を強くこすらないようにしましょう。歯磨き後に痛みが強くなる場合は、歯磨き粉を変えるか、温かい水で口をすすぐことで痛みが和らぐことがあります。
⑤知覚過敏用のジェルやクリームを使用
市販で販売されている知覚過敏用のジェルやクリームを使用することで、痛みを軽減することができます。これらの製品は、歯の象牙質を一時的にコーティングして刺激から守り、痛みを和らげます。
⑥生活習慣の見直し
知覚過敏の原因となる習慣(歯ぎしり、強く噛む、酸性食品の摂取など)がある場合、それを改善することが重要です。歯科医師に相談して、適切な予防策を講じましょう。