こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科の岩村です。
今回は「パタカラ体操」についてです。
✅ パタカラ体操とは?
口の動き・舌・唇・頬をバランスよく鍛えるための口腔機能向上トレーニングです。
発声しながら行うため、口腔周囲筋(口輪筋・頬筋・舌筋・咀嚼筋)を総合的に強化できます。
高齢者の誤嚥(ごえん)予防、食事・発音の改善、美容目的(口元の筋力アップ)など幅広く使われています。
🎯 パタカラ体操の目的(何のために行うのか)
パタカラ体操の主目的は次の4つです。
① 口腔機能(口・唇・舌・頬・咽頭)の筋力と協調性を高める
「パ・タ・カ・ラ」の4音は、以下のように 異なる筋肉群を使います:
| 音 | 主に使う部位 | 目的 |
|---|---|---|
| パ | 口輪筋・唇の閉鎖力 | 食物をこぼさずに保持、飲み込みの準備 |
| タ | 舌尖(舌先)・上顎 | 食物を中央→奥へ送る動き |
| カ | 舌根(舌の奥)・咽頭 | 嚥下の後半、喉への送り込み |
| ラ | 舌尖の素早い運動 | 発音の明瞭化、舌の敏捷性UP |
目的: これらの筋を総合的に鍛え、
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嚥下(飲み込み)
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咀嚼(噛む)
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発音
の基礎能力を改善する。
② 嚥下障害(誤嚥)を予防する
高齢者に導入される最大の目的。
食事中の「ムセ」「誤嚥(気管に食べ物が入る)」を防ぎ、誤嚥性肺炎のリスクを下げることが期待されます。
特に重要なのは「カ」音と舌根の動き。
舌根が強くなると、飲み込む直前の 口腔内→咽頭への後押し がスムーズになり、
誤嚥のリスクが減少します。
③ 構音(発音)の明瞭化
パタカラ体操は、言語療法(SLP)でも使用される基本訓練です。
目的:
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口・舌の動きを大きく・正確にする
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舌や唇のコントロール(協調運動)を改善する
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早口やもつれやすい音の改善
特に
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パ行 → 唇の閉鎖力
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タ行 → 舌先の位置
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カ行 → 舌後方の運動
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ラ行 → 舌の弾き
が改善しやすい。
④ 唾液分泌を促し、口腔乾燥を防ぐ
発声と口の運動で唾液腺が刺激されるため、
ドライマウス改善や口腔内の自浄作用(セルフクリーニング)向上が期待できる。
⭐ パタカラ体操の効果(実際にどう変わるのか)
以下では「臨床現場で見られる効果」を中心に詳しく説明します。
1️⃣ 嚥下(飲み込み)がスムーズになる
✔ 舌で食べ物をまとめる力が上がる
→ 食塊形成(ボーラス形成)が改善
✔ 舌の前後運動が強くなる
→ 口腔内の食べ物の送り込みが安定
✔ 舌根の動きが良くなる
→ 咽頭(のど)への送り込みがスムーズ
→ 誤嚥を防ぐ効果が最も強いポイント
2️⃣ ムセ(むせ込み)が減る
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飲み込みのタイミングが合いやすくなる
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唇の閉鎖力が上がり口からのこぼれが減る
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食べ物が気管側に行きにくくなる
特に高齢者で実感しやすい効果。
3️⃣ 発音が明瞭になる(構音改善)
口の動きが大きくなる
→ 声がハキハキして聞き取りやすい
舌の素早さが向上
→ もつれやすかったラ行・タ行が改善
唇の閉鎖が強くなる
→ パ行・バ行・マ行の音がクリアに
4️⃣ 唾液分泌が促進され、口腔乾燥が改善
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唾液量が増える
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舌の動きが良くなることで唾液が口全体に行きわたる
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ドライマウスによる
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口臭
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口内トラブル
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口のネバつき
などの改善が期待できる
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5️⃣ 食事の量・楽しさが向上する
口の動きがスムーズになると
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食事が疲れにくい
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食べこぼしが減る
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噛んだものを上手に飲み込める
その結果、食欲が戻る人も多いです。
6️⃣ 顔の筋肉が鍛えられ美容効果が期待できる
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表情筋(口輪筋・頬筋)が活性化
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口角が上がりやすくなる
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たるみ・ほうれい線対策として使用されることもある
※美容目的は二次的な効果で、医学的主目的は口腔機能向上です。
7️⃣ 脳への活性効果(口腔感覚刺激)
口や舌を大きく動かし、音を出すことで
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脳の感覚野・運動野が活性化
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認知症予防体操としても導入されている
🔰 基本のパタカラ体操(正しいやり方)
■ 0. 姿勢と準備
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背筋を伸ばして、楽に座る
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顎を少し引く(嚥下しやすい姿勢)
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鼻呼吸を意識し、口はリラックスさせておく
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唇を軽く閉じてスタート
■ 1. 基本の発声トレーニング(初心者〜すべての人)
【ゆっくり・はっきり発声する方法】
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パ
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タ
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カ
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ラ
の順に、大きく・ゆっくり・明確に発音する。
これを 10回 × 1〜3セット。
✔ ポイント
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「パ」は唇をしっかり閉じてから ポンッと弾く
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「タ」は舌先を上前歯の裏に正確に 当てる
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「カ」は舌の奥を持ち上げる意識
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「ラ」は舌先を素早く 弾く
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音の大きさより「口と舌の動き」が重要
■ 2. リズムよく連続して行う方法(中級者)
「パタカラ パタカラ パタカラ…」と
リズムよく10〜15回繰り返す。
✔ ポイント
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口や舌が「だんだん雑にならないように」注意
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滑舌トレーニング・口腔協調運動の改善に効果的
■ 3. 音別トレーニング(弱い部分を重点訓練)
● 唇の閉じる力を強化したい → パ
「パパパパパ……」10回 × 2セット
→ 唇をしっかり閉じる力がUP(食べこぼし防止)
● 舌先の動きが弱い → タ / ラ
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「タタタタタ…」
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「ラララララ…」
→ 発音改善、舌の敏捷性UP
● 舌の奥(舌根)を鍛えたい → カ
「カカカカカ…」
→ 嚥下後半の“送り込み”が強化され誤嚥予防に効果が大きい
■ 4. さらに効果を高める“強化版パタカラ体操”(上級者)
(1)大きく動かすバージョン
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「パ」:唇を大げさに閉じて開く
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「タ」:舌先をしっかり押し当てる
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「カ」:舌の奥を大きく動かす
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「ラ」:舌を素早く弾く
→ 口腔周囲筋全体が強化される
(2)声を出さずに口の動きだけ行う(無声音)
声が出しにくい人は、口だけで
パ → タ → カ → ラ
と動かす。
→ 喉への負担が少なく、筋トレ効果はそのまま。
■ 5. 食事・嚥下改善に特化したやり方
◎ 食事中のムセを減らす目的
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「パ」で口の閉鎖力UP → 食べこぼし減少
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「タ」で舌先の送り込み → 食塊形成が上手に
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「カ」で舌根強化 → 喉へしっかり送り込む
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「ラ」で舌の素早さUP → 全体の協調性向上
ゆっくりはっきり 10回 × 2セットが最も効果的。
■ 6. 発音改善(滑舌トレーニング)に特化したやり方
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口を「大きく」開ける
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舌の動きを最大限にする
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早口になり過ぎない
例:
「パタカラ」× 15回
「タカラパ」「カラパタ」など順番を変えるとより応用力が付く。
🔍 パタカラ体操の効果を高めるコツ
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鏡を見て動きを確認(口の形が崩れにくい)
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早くやろうとしない。雑な動きは効果が激減
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5分もあればできるので毎日続ける
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あくびや唾液が増えるのは効果が出ているサイン
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痛みがあれば中止(特に顎関節症の人)
⚠ やってはいけないNGポイント
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唇を軽くしか閉じていない「パ」
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舌先が上顎に届いていない「タ」
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喉を使いすぎた苦しい「カ」
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舌が巻きすぎて発音にならない「ラ」
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疲れすぎて動きが小さくなるまで続ける
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口内炎・口角炎があるときの過度な動き
📌 どれくらい続ければいい?
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1日 1〜2回
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1回 3〜5分程度
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2〜4週間続けると変化を感じやすい
嚥下リハビリでは 毎日継続が一般的です。