こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科院長の岩村です。
今回は「慢性流涎」についてです。慢性流涎とは、長期間にわたって唾液(よだれ)が過剰に分泌される、あるいは唾液のコントロールができずに口外へ流出してしまう状態を指します。医学的には「唾液過多(sialorrhea または hypersalivation)」とも呼ばれます。
✅ 原因
慢性流涎の原因は、大きく分けて以下の2つのタイプに分類されます。
1. 唾液の分泌が多すぎる(過剰分泌型)
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薬の副作用(例:クロザピン、リスペリドンなど)
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妊娠中(ホルモンの影響)
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胃食道逆流症(GERD)
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特定の感染症(例:口腔感染、虫歯)
2. 唾液の排出・嚥下がうまくできない(排出障害型)
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神経筋疾患:
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パーキンソン病
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脳性麻痺(CP)
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ALS(筋萎縮性側索硬化症)
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脳梗塞後遺症
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口の筋力低下や運動障害
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精神発達遅滞
🧠 小児と成人での違い
| 年齢層 | 主な原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小児 | 脳性麻痺、発達障害 | 嚥下障害が原因のことが多い |
| 成人 | パーキンソン病、薬の副作用、認知症 | 慢性的で生活の質を下げる要因 |
🩺 症状・影響
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衣服が濡れる
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顔面皮膚の炎症(よだれかぶれ)
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発音の障害
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社会的なストレスや羞恥心
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脱水のリスク(重症の場合)
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誤嚥性肺炎のリスク増加(嚥下困難がある場合)
🧪 診断方法
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病歴の聴取(いつから、どれくらいの頻度か)
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神経学的評価(パーキンソン病などの兆候)
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嚥下機能検査(VFSSや内視鏡)
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唾液量の測定(ガーゼ法など)
💊 治療法
1. 保存的治療
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姿勢や口腔周囲筋の訓練(ST=言語療法士が指導)
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嚥下訓練
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マウスピース装着
2. 薬物療法
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抗コリン薬(唾液の分泌を抑制)
例:スコポラミン貼付薬、アトロピン点眼薬(舌下投与) -
クロニジン(α2作動薬)
3. 注射療法
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ボツリヌス毒素(ボトックス)注射
唾液腺に直接注射して、数ヶ月間唾液分泌を抑制
→ 効果が高く、近年人気の治療。
4. 外科的治療(重度の場合)
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唾液腺の摘出
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唾液管の結紮・移動術(舌下への移動など)
🧩 補足:日常生活での工夫
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よだれを拭きやすい衣類やタオルの活用
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姿勢(頭を少し前に傾けると流れにくい)
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食事中・会話中のペースをゆっくりにする
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飲み込む練習や声出し練習