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子どもの風変わりな歯について③|いわむら歯科|瑞穂区中山町の歯医者

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子どもの風変わりな歯について③

こんにちは、名古屋市瑞穂区の桜山駅から徒歩6分にあります、いわむら歯科院長の岩村です。

今回も引き続き子供でよくみられる「異常な歯の形態、色調」のついて記載していきます。

<色調異常:全体的に認める場合>
すべてまたはほとんどの歯において、正常な歯の色と異なる着色や変色が見られる状態を指します。これは、局所的なもの(特定の歯だけの変色)とは異なり、広範囲におよぶ全身的または系統的な原因が関与することが多いです。

①先天性・遺伝性の色調異常
◆ エナメル質形成不全(amelogenesis imperfecta)
◆ 象牙質形成不全(dentinogenesis imperfecta)

これらに関しては前回記載したブログで詳しく解説しておりますので、そちらを参照下さい。
: https://iwamura-dental.com/topics/2025/10/27/子どもの風変わりな歯について②/

②後天的な全身性要因による色調異常
◆ テトラサイクリン歯(tetracycline staining)
母体や本人が歯の形成期(出生前後~7歳頃)にテトラサイクリン系抗生物質を使用したことが原因で起こる、グレー~茶褐色の縞状の変色です。歯列全体にわたり変色が認められ、紫外線で蛍光を示すことがあります。

◆ フッ素症(歯のフッ素過剰症、fluorosis)
歯の形成期に過剰なフッ素摂取(飲料水・歯磨きなど)をしたことによって、白斑~褐色の斑点や縞状の変色を認める事があります。軽度では白濁、重度では茶色の斑点や凹凸を認めます。

③全身疾患や代謝異常に伴う変色
◆ 新生児肝炎や胆道閉鎖症などによるビリルビン沈着
高ビリルビン血症の影響により、歯に緑色がかった変色が現れます。

◆ ポルフィリン症
歯が赤褐色や紫色に変色します。(「エリスロドンティア」)光に反応して蛍光を示すこともあります。


 診断のポイントとしては、以下の通りです。
問診:薬剤歴、妊娠中の母体の健康状態、既往歴、フッ素の使用状況など
家族歴:遺伝性疾患の可能性を評価
X線写真:象牙質やエナメル質の構造を確認
臨床所見:全歯に及ぶか、どの層が変色しているかなど


治療法ですが、以下の方法があります。
ホワイトニング(軽度な着色に有効)
コンポジットレジン修復(一部の歯に)
ラミネートベニア(前歯など審美性が求められる場合)
クラウン(重度な変色や歯質の問題がある場合)
予防管理(これ以上の変色や摩耗を防ぐ)



<色調異常:局所的に認める場合>
齲蝕が観察されない歯冠の局所的な変色は、外傷などによる歯髄内出血および壊死などが疑われます。外傷から数週間~数ヶ月後に変色していき、ピンク、赤、褐色、灰褐色、黒色の色調変化として観察されます。乳歯で観察される場合は、後継永久歯歯胚にも影響する場合があるため、歯科医院への受診をすすめます。


以下の2つは歯の健康診査では記載の必要がないですが、よく見られる歯の形態異常です。

<矮小歯>

矮小歯(わいしょうし、英語:microdontia)とは、正常な歯よりも小さい歯のことで、形態異常の一つです。先天性のことが多く、特定の歯に限局して起こる場合もあれば、全体的に小さいこともあります。乳歯・永久歯どちらにも起こりますが、永久歯の側切歯や第三大臼歯(親知らず)に多く見られます

矮小歯は大きく以下の3つに分類されます:

分類 内容 特徴
限局性矮小歯 特定の1本または数本の歯だけが小さい 最も一般的。上顎側切歯や智歯に多い
相対的矮小歯 顎の大きさに比べて歯が小さく見える 歯が正常でも顎が大きいため矮小に見える
真正矮小歯 すべての歯が実際に小さい 非常に稀で、全身疾患が背景にあることも

矮小側切歯(peg lateral)
・上顎側切歯(2番目の前歯)が釘のような細い形をして小さいです。
・頻度が高く、左右どちらか、または両側にみられます。
・遺伝的要因が関係することが多いです。
・審美的・咬合的な問題を引き起こすことがあります。

矮小智歯(第3大臼歯)
・親知らずが非常に小さい、または異常な形をしています。
・萌出しない(埋伏)ことも多いです。

原因・背景
種類 内容
遺伝的要因 家族性に見られることがある。常染色体優性遺伝など。
発育期の障害 胎生期や乳幼児期の病気、栄養不良、放射線など
全身性疾患との関連 ダウン症、クレチン症、小人症などで全体的に小さな歯が見られることも

 診断方法
視診・触診:歯の大きさ、形、対称性を評価
レントゲン:歯根の形成状態や隣接歯との関係を確認
模型診査:歯列全体のバランス評価
家族歴・既往歴の確認:遺伝や全身疾患の影響の可能性を調査

治療と対応
矮小歯自体に機能的な問題がなければ治療は不要ですが、審美的・咬合的な問題がある場合には以下のような治療が行われます:
問題 対応法
審美障害(前歯など) コンポジットレジンで形態修正、ラミネートベニア、クラウンなど
咬合障害 矯正治療(スペースの調整や閉鎖)
隣接歯との位置異常 ブリッジ、インプラントなどによる補綴治療

小児での対応(乳歯や永久歯萌出期)
乳歯の矮小歯はあまり多くありませんが、見つかった場合は後継永久歯の発育異常のリスクがあるため、定期的な経過観察が必要です。また、永久歯の矮小側切歯が見つかった場合、小児期から将来的な矯正や補綴の計画を立てることが理想です。

<カラベリー結節>

カラベリー結節(Cusp of Carabelli, カラベリ結節)とは、上顎第一大臼歯の舌側(口蓋側)にみられる副咬頭(ふくこうとう)のことです。正常の解剖学的変異の一つで、解剖学的な付加的構造とされ、病的なものではありません。発生メカニズムですが、歯の発生初期(咬頭形成期)におけるエナメル器の増殖パターンの違いにより、副咬頭が形成される際に、過剰なエナメル器細胞の分化によりカラベリー結節が形成されると考えられています。

 特徴

特徴 説明
出現部位 上顎第一大臼歯の近心口蓋咬頭の内側
左右対称性 多くは左右対称だが、非対称な場合もある
大きさのバリエーション 小さな隆線状〜明瞭な突起や結節まで
片側or両側 両側にあることが多いが、片側だけのこともある
遺伝的傾向 家族内での出現率が高く、遺伝との関連が示唆されている


 出現頻度
人種・地域 出現率(上顎第一大臼歯)
ヨーロッパ系 約50〜80%
アジア系 約30〜60%
アフリカ系 約20〜40%

※ 出現率や形態は人種差個体差があります。


カラベリー結節はその大きさ・形により分類されることもあります:

種類 特徴
Type 0 結節なし(平滑)
Type 1 小さな隆線状の構造
Type 2 明瞭な突起や小咬頭(結節)を形成


解剖学的・臨床的意義
意義 内容
正常変異 病的所見ではなく、解剖学的なバリエーション
補綴・修復治療時の考慮点 クラウンやインレー形成時に形態を把握しておく必要がある
齲蝕リスク 大きな結節がある場合、溝ができてプラークが溜まりやすく齲蝕のリスクとなることも
法歯学的応用 人種・個人識別に用いられることがある(歯の形態の比較)


 注意点
大きなカラベリー結節がある場合は、隣接面との清掃が困難 となり 齲蝕のリスクが高くなったり、非常に稀ですが、咬合干渉への関与することがあります。
歯科治療ではクラウンや補綴物を製作する際、結節を保存するか削除するかの判断が必要となります。



ここまで3回に分けて解説してきました。よくわからない事や不安なことがありましたら、最寄の歯科医院で相談してください。
※このブログは日本小児歯科学会が2023年4月に示した提言を参考に作製しております。