こんにちは、名古屋市瑞穂区にあります、桜山駅から徒歩6分のいわむら歯科院長の岩村です。
今回は「口臭ってどんな原因があるの?(病的口臭編)」です。
病的口臭は器質的疾患が原因となり発生する口臭のことで、歯科・口腔領域や耳鼻咽喉領域の疾患、そして例えば糖尿病、肝疾患、腎疾患などの内科的疾患や器質的疾患が原因となり発生します。なお、病的口臭の原因は大部分を歯科・口腔領域が占めるといわれます。口腔内に口臭の原因がなく、口腔内洗浄や歯周治療を行ってもなお軽減しない強度の口臭がある場合は、耳鼻咽喉科系の疾患を疑います。
①歯科・口腔領域の疾患に起因する口臭
1.口腔清掃不良
生理的口臭的な要素ともいえますが、口腔内に食渣やプラークの付着量、剥離した上皮などのタンパク質が多いと唾液中に浮遊する細菌量が増加し、舌を含む口腔全体に拡散して広い範囲に細菌由来の口臭が発生します。小児の側方歯群交換期や矯正歯科治療中は一時的な口腔清掃不良になりやすいため、特に注意が必要となります。
2.歯周炎[根尖性歯周炎、特殊な歯周炎(壊死性潰瘍性歯周炎や壊死性潰瘍性歯肉炎など)含む]
歯周病が進行すると歯周ポケットから出血しやすくなり、血液を好む嫌気性菌の増殖を促進します。さらに歯周組織破壊が進行すると歯周ポケット内から排膿するようになり、口臭が発生していきます。
3.多数歯にわたるう蝕
う窩に食物残渣が滞留したり細菌が増殖したりして、悪臭が発生します。二次う蝕などで上部構造が外れ口腔内に露出したう蝕なども、口臭の原因として多く見られます。
4.口腔粘膜の炎症
たとえば口蓋弓は口呼吸などで炎症を起こしやすく、アフタなどの炎症性病変が認められることもめずらしくありません。こうした粘膜の炎症があると表層の上皮は剥離しやすくなり、その上皮が長く口腔内に留まると口腔内細菌によって分解されます。すると、プラーク由来の口臭が発生することになります。
5.舌苔
舌苔は剥離上皮、白血球、口腔内細菌、食物残渣などからできており、そのタンパク質が口腔内で分解されて口臭が発生します。また原因は不明であるものの、胃炎などの胃の不調と舌苔の発生に相関関係があることが示唆されています(なお逆流性食道炎では、胃液の刺激により糸状乳頭の伸展が認められることがあります)。ただ成人の舌乳頭先端は白いのが通常であり、小児のように赤い舌でなくても、舌乳頭はひとつひとつ分かれて見えているなら、異常とはいえません
6.清掃不良の義歯
平滑な面であっても、部位によって義歯にデンチャープラークが付着することがあります。さらに義歯上にプラークが石灰化するとさらにプラークが付着しやすくなり、細菌が原因の口臭が発生します。義歯は毎日外して流水下で専用ブラシで清掃し、義歯洗浄剤に数時間漬けておくなどの適切な管理が必要となります。
7.適合していない修復物
歯と適合していない充填物や補綴装置部分の清掃状態が悪くなり、食渣やプラークが溜まってにおいが発生します。歯周病に罹患・改善した後の修復物の辺縁も、プラークが溜まりやすくなります。
②耳鼻咽喉科疾患に起因する口臭
1.鼻炎・副鼻腔炎にともなう後鼻漏
鼻炎:炎症で増加した鼻汁が後鼻漏(鼻水が鼻の穴からではなく喉の方に垂れてくる生理現象。粘性を帯びて鼻水の流れが悪くなると
口臭の原因となり得る)となって咽頭部に流れ込み、口腔内で細菌が増加して口臭の原因となることがあります。
副鼻腔炎:鼻腔につながる副鼻腔(上顎洞・蝶形骨洞など)では、風邪などで粘膜に炎症が発生します。それにより滲出液が後鼻漏とし
て咽頭部に流れ込み、口腔内で細菌が増加して口臭の原因となることがあります。
2.口蓋扁桃周囲の炎症疾患(扁桃周囲炎)
扁桃周囲炎の原因である常在細菌叢のうち、偏性嫌気性菌からにおいが発生します。また通常6歳ごろに最大となり、その後成長とともに縮小するはずの口蓋扁桃が大きいまま残存しているケースでは、口蓋扁桃の陰窩内に膿栓ができ、膿栓を構成する偏性嫌気性菌からプラーク由来もしくは歯周病のようなにおいが発生します。
3.咽頭疾患
咽頭部の慢性疾患や、扁桃周囲に存在するリンパ組織が膿瘍を形成し、自壊して膿が出ることがあります。排膿にともない特徴的な悪臭を発します。程度の微小な腫脹であれば、不規則な生活を改善し口腔清掃や含嗽を徹底することで寛解していきます。
4.鼻咽腔・口腔・顎顔面領域の悪性腫瘍
鼻咽腔・口腔・顎顔面領域に潰瘍をともなう腫瘍があると、粘膜組織などに生息する細菌群が壊死部位の組織を栄養源とし、腐敗臭が発生します。
③全身疾患に起因する口臭
1.糖尿病・腎疾患・肝疾患・肺がんなど
進行した糖尿病・腎疾患・肝疾患は、血中に代謝産物や老廃物を増加させ、強い口臭を発生させることがあります。血液中の代謝産物が肺胞経由でガス交換され、呼気として排出されて口臭と認識されます。
ちなみによく「胃からにおいが挙がってくる(だから息がくさい)」などという話をする人がいます。しかし、実はゲップでにしない限り、胃のにおいが口腔内に出てくることはありません。胃と食道の間には横隔膜、噴門、下部食道括約筋が存在し、空気を含む胃の内容物が食道に逆流してくるのを防いでいるからです。
ではなぜニンニクなどが次の日にもにおうのかというと、代謝された臭気成分が血液に乗って肺に到達し、呼気として排出されるからです。ですので、においは胃ではなく肺から出ていることになります。
なお、ストレスと胃潰瘍には相関がありますので、胃潰瘍のある人=ストレスがある=唾液分泌量が少ない、という関連があるかもしれません。また、胃にピロリ菌が検出された人と検出されなかった人を比較し、ピロリ菌が検出された場合、官能検査や硫化水素の値が有意に高かった(つまり口臭がある)という報告もあります。これは、胃壁に生息するピロリ菌の代謝物が血流に入り、呼気から悪臭になって出ていくのではと考えられています。
さて、口臭の原因はさまざまありますが、口腔内に起因する生理的口臭、病的口臭が大半を占めます。皆様、口臭が気になったら歯科医院に行って口腔内診査をしてもらいましょう。いわむら歯科ではしっかりとした口臭治療を実践しておりますので、ぜひご来院頂ければと思います。